「ヴンダーカンマー(ヴンダーカマー)」驚異の部屋とは?

ヴンダーカンマーはドイツ語ではWunder(驚異の) Kammer(部屋)と書きます。15世紀のイタリアから発生し18世紀後半まで欧州で流行した珍品を蒐集した部屋です。
ヴンダーカンマー

元祖博物館・ヴンダーカンマー

産業革命華やかな大英帝国の時代には既に廃れてしまっていたヴンダーカンマーですが、スチームパンクにも大変重要なかかわりがあります。ヴンダーカンマーは現在の博物館、科学館、美術館の元であり、スチームパンク時代の科学の発展に大きく貢献しているからです。

ヨーロッパ全土に広まる

ヴンダーカンマー
もともとヴンダーカンマーは王侯貴族や土地の支配者が珍奇なものを集めて客に披露するための個人的なコレクションでした。それがヨーロッパ全土に広まり、珍しい動植物や鉱物の標本、最先端の技術で作られたからくりなどありとあらゆるものが蒐集され博物学が発展したのです。

大英博物館も個人コレクションが始まり

ヴンダーカンマー
世界最大の博物館のひとつであり、700万点の所蔵品を誇る大英博物館も、もとは蒐集家・ハンス・スローン卿の個人コレクションを公開したのが始まりです。スローン卿の蒐集品は8万点以上あったと言われており、1759年に博物館として一般に披露されました。収蔵品の増加にともない1881年に自然史博物館が分館として建てられるまでは、所狭しと蒐集品が並んだ巨大なヴンダーカンマーのような様子だったのではないでしょうか。

なんでもアリのコレクション

ヴンダーカンマー
ヴンダーカンマーはなんでもアリのコレクションです。天井にはワニの剥製、精巧なオートマタが棚に置かれているかと思えば、壁に世界の辺境の地の民族衣装が飾られ、その隣には青く輝くチョウの標本が並んでいます。古代の兵士の甲冑に美しい南国のトリの剥製、何の骨だかわからない動物の骨格、人魚のうろこ、ユニコーンの角、悪魔の閉じこめられた琥珀なんてものまで!

現代の博物館

ヴンダーカンマー
出所のわからぬ不思議な遺物から最先端のメカまで、古今東西の珍奇なものならなんでもそろっているヴンダーカンマー。なるほど博物館の前身であるのも頷けます。しかし現代の博物館はあまりに細分化が進んでしまいました。科学の進歩によって、くっきりと明かりに照らされた「近代科学」のみが展示され、暗闇に潜む「謎」や「不思議」は排除されてしまっているのです。

分類よりも蒐集!

ヴンダーカンマー
ヴンダーカンマーには光と闇が手を取り合っていた、古き良き時代の遺物が閉じこめられています。蒐集家の好奇心と探求心の赴くままに、片っ端から集めたモノの山はまさにヴンダー(驚異)。「分類」? そんなことよりも「蒐集」優先! カオス状態の知の集積。一歩部屋に踏み込んだとたん懐かしく胸がしめつけらられうような思い、ワクワクするような気持ちが湧き起こります。

現代科学がなくしたもの

ヴンダーカンマー
スチームパンク時代の科学にはあるけれど、現代科学において忘れられがちなのがこの「ワクワクする心」だと思います。輝かしい未来を信じて蒸気機関を走らせるスチームパンクと、世界の全てを無尽蔵にコレクションしようとするヴンダーカンマーは、現代の人々が感じている閉塞感を吹き飛ばしてくれるような力があります。

愉悦の蒐集 ヴンダーカンマーの謎』の中で著者の小宮正安氏はこう書いています。

子供が何かのコレクションに夢中になるように、大の大人たちが蒐集に飽くなき情熱を注いだ。しかも彼らは単に集めるだけでなく、蒐集品を用いて独自の世界を築き上げることに、こよなき悦(よろこ)びを感じた。この悦びこそが、現代の、とりわけ学問に、大いに欠けている要素だろう。悦ばしき知を取り戻し、硬直化してしまった学問に風穴を空ける。こうしてヴンダーカンマーは近代的な知の温床として、けっして見過ごしにはできない存在となりつつある。

『愉悦の蒐集 ヴンダーカンマーの謎』

知の小宇宙・ヴンダーカンマー

ヴンダーカンマー
奇怪なもの、不思議なもの、美しいもの、珍しいもの──なんでもかんでも詰め込んだ知の小宇宙・ヴンダーカンマー。学ぶ悦びとワクワクする気持ちを感じられるような書斎を目指して、私も少しずつ珍奇なものを集めていきたいです。

追記(2010/05/24)

某愛読者様より「本業はドイツ語関係ですが、Wunderkammerのカタカナ表記は『ヴンダーカンマー』より『~カマー』の方が実際の発音に近くなりますので、参考にしていただければ幸いです」とご指摘いただきました。

なるほど! SEO的にもブログには「ヴンダーカンマー」「ヴンダーカマー」両方の記述をした方が良さそうですね。タイトルなど一部変更いたしました。ありがとうございました☆

蒸気夫人
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