【豆知識】なぜ歯車はスチームパンクと結び付けられているのか?

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スチームパンクと言えば歯車がつきものですね。でもいったいどうしてなのでしょうか? 歯車とは何か、そしてデザインとしての歯車とスチームパンクの関係について解説します。
スチームパンクと歯車

くるくる回る歯車が印象的なメカ、ギヤいっぱいのドレスやハット。いったいなぜスチームパンクと歯車が結び付けられているのでしょうか? そもそも歯車とはいったい何なのか? 明確な答えをご存知の方は意外に少ないものです。ここで歯車の歴史を振り返ってみましょう。

スチームパンクとは何か?

スチームパンクと歯車
スチームパンクとは、現代の技術を遥かに超越する架空(if)の世界を描いた歴史改変空想科学作品(SF)のことです。SF作品ですからどんな空想も可能ですが、大多数の作品は蒸気機関を原動力に、産業革命から第一次世界大戦前後ぐらいまでの世界をベースに描いていることが多いようです。

歯車の歴史

スチームパンクと歯車
歯車の歴史は数千年前までさかのぼることが出来ます。歯車の元となった車輪(wheel)が登場したのです。車輪は人間の歴史の中でも最も重要な発明と言われています。古代メソポタミアではろくろや荷車、車輪として使われ、紀元前4千年紀にはヨーロッパや西南アジアにまで広まりました。

古代ギリシャ時代まで遡る


この車輪の摩擦車で、より大きな回転運動を伝えるために歯がつけられたものが歯車のはじまりです。アンティキティラ島の機械は、歯車を使って複雑な天体運航の計算をする機械です。これは紀元前150〜100年に製作されたと考えられており、少なくとも古代ギリシア時代には歯車が使われていたと言えます。

歯車とともに発展した歴史


13世紀にはおもりによる機械時計が発明されました。15世紀後半の天才・レオナルド・ダ・ヴィンチも歯車のスケッチを数多く残していますね。日本でもフランシスコ・ザビエルが機械式時計を1551年に献上しています。人類の科学の発展において歯車は欠かせない重要な部品です。

産業革命と歯車

スチームパンクと歯車
ではそんな昔から使われている歯車が、なぜスチームパンク世界の象徴として使われているのでしょうか? そのヒントは「産業革命」です。18世紀の産業革命において、歯車が果たした役割は計り知れません。歯車は機関車や機械を動かすために蒸気機械の動力伝達として活用されるようになり、産業革命時代に機構の進化が一気に進んだのです。

(写真は愛知県のトヨタテクノミュージアム産業技術記念館で撮影)

より大きなトルクを得ることが可能に!

スチームパンクと歯車
それまでも歯車で機械を動かすことは可能でしたが、回転速度があっても回転力(トルク)が十分に得られませんでした。トルクとは、簡単に言えばものを動かす時に必要とする力のことです。歯車の働きはいろいろありますが、最も大切なのは「変速」です。産業革命時代には、歯車の回転比率を変えて変速させ、より大きなトルクを得ることが可能になったのです。

産業革命に歯車は必要不可欠

スチームパンクと歯車
つまり産業革命において歯車は必要不可欠の存在なのです。実際に博物館などで当時の蒸気タービンや蒸気機関の実物を見ると、数多くの歯車が使用されているのが観察できるでしょう。産業革命以降の歴史を基礎としたスチームパンク作品が、歯車を重要な要素として使用するのは全く不思議な事ではありません。

スチームパンクにおける二種類の歯車

スチームパンクと歯車
スチームパンクにおける歯車には二種類あると言えます。一つは実際に外燃機関として、または時計など機械仕掛の部品としての「【1】機能を持った歯車」。もう一つは科学の象徴として使用される「【2】意匠(デザイン)としての歯車」です。海外のネットではこのスチームパンク論争が数十年も前から定期的に起こっています。

いわく「飾りとして安易に歯車を使うのは間違っている」「スチームパンクではあくまで蒸気機関による機械であるべきだ」、または「デザインとして歯車を使うのがなぜいけないのか」「そもそも機械の内部にある歯車を外部に露出させている時点でおかしい」など侃々諤々──あなたはどう思いますか?

お財布の中をのぞいてみましょう

スチームパンクと歯車
私個人はデザインとして歯車を使用するのは全く問題ないと考えています。その証拠は、あなたのお財布の中にあります。

五円玉を見てみて下さい。五円玉の穴のまわりにあるギザギザは歯車を表しています。この歯車は工業の象徴です。五円玉には、上の写真のように「農業、漁業、林業、工業」そして硬貨の「商業」を合わせた5つの要素がデザインされています。

日本の五円玉は、工業の先進国として発展してきた自負と期待が込められた素晴らしいデザインです。こんなお金が使われているのだから日本でスチームパンクが流行るのも納得かもしれませんね。

硬貨や国章・国旗の歯車

スチームパンクと歯車
日本だけではありません。また世界でもイタリア、ベトナム、中国、アンゴラの国章(そして国旗)に歯車がデザインとして取り入れられています。どれも工業や労働者の象徴、または国の工業の発展を祈る気持ちが込められた美しい意匠です。(国章の一覧 – Wikipedia

スチームパンク世界の歯車

スチームパンクと歯車
現実世界の硬貨や国章、国旗にも歯車がデザインとして取り入れられているのですから、スチームパンク世界で、歯車が意匠として使われるのは当然のことでしょう。また高度に進歩した科学力、工業の発展を寿(ことほ)ぐという意味で、スチームパンク世界の人々はきっと歯車に親しみを持っているのではないでしょうか。

デザインとしての歯車は工学的に正しくあるべき?

安易に歯車をデザインに使うな、咬み合わない歯車など意味が無い──という主張もあります。でも平和のシンボルとして描かれた鳩のイラストを「この鳩の絵は解剖学的に間違っている」「この羽の構造で飛ぶことはできない」などと揶揄するのはナンセンスです。

たとえ歯車が回ろうとも、実質的な機能がない歯車は飾りと同様です(「意匠としての歯車」)。しかし歯車が回転するかどうか、機械工学的に正しい構造かどうかより、もっと大切なことがあるのではないでしょうか。

機能、意匠どちらもスチームパンクには重要な要素

スチームパンクと歯車
スチームパンク世界における「【1】機能を持った歯車」と「【2】意匠としての歯車」はどちらが正しいとか、優れているということではありません。どちらも重要でスチームパンクに欠かせない要素です。

また「スチームパンク=歯車」ということでもありません。歯車を使わないスチームパンク表現も十分に考えられますね。創作は自由で構わないのです。

ぜひあなたの作品に歯車を

スチームパンクと歯車
あなたの工作に、ファッションにぜひ歯車を取り入れてみましょう。その歯車は回っても回らなくても良いのです。それよりも道具としての使い勝手、人をワクワクさせるアイデア、美観、DIY精神の方がずっと大切なことです。

そしてもしこの記事を読んで、歯車についてもっと知りたいという方がいらっしゃったら管理人にとってとても嬉しいことです。ぜひネットや書籍でより深い知識を学んでみましょう!

画像はフリー素材サイトvisualhuntから使用しました。



蒸気夫人

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