映画『プレステージ』

19世紀後半から20世紀初頭のアメリカで活躍したマジシャン、マックス・マーリニ(1873~1942)。彼は観客の予想外のモノを突如として出現させるマジックが得意でした。
プレステージ

帽子の中から山ほどの小石、レンガや氷の固まり、懐からジョッキになみなみと注がれたビール。いったいマーリニはどうやってそれらのモノを出現させたのでしょうか?

マーリニの奇術の秘密

マーリニの秘密は「常識はずれの忍耐力」にありました。例えばビールの入ったジョッキ。彼は酒場に行くと隙を見つけて厨房でビールを頼みます。それからジョッキを脇の下に挟み、スーツで隠して何喰わぬ顔で席に着きます。そして待つのです。何時間でも。お客の誰かが「おやおやマーリニさんではないですか! 何かマジックを見せてくださいよ」と言い出すまで。

観客を驚かせるために

プレステージ
ジョッキをずっと脇で挟んでおくのは不自然な力がいるし、冷えたビールは寒い時期には辛かったでしょうね。そんなばかげたことをするなんて誰も思いも寄らないでしょう。だから皆「彼をずっと見ていたけどビールなんて手に入れる時間はなかった」と証言するのです。マーリニは観客に劇的な効果を与えられるなら、喜んで何時間でも耐えました。

『プレステージ』あらすじ


映画『プレステージ』でマーリニのエピソードを思い出しました。時は19世紀末。ロンドンで人気を二分する二人のマジシャン、グレート・ダントン(偉大なダントン)ことロバートと、プロフェッサーことアルフレッド。もともとはお互い切磋琢磨しあっていた二人でしたが、水中脱出マジックの失敗でロバートが妻を失ってから、二人は憎み合うライバルとなってしまいます。この世で最高のマジシャンとなるのははたしてどちらなのか!? 1995年発行の小説『奇術師』の映画化です。

ヴィクトリア朝のくすんだ雰囲気

128分という長めの映画ながらあっという間に引き込まれ、最後まで飽きさせません。ヴィクトリア朝のくすんだ空気、陰鬱さが全体にただよっていて、マジックの持つ神秘性にぴったり合っています。衣装、大道具・小道具、街の風景などレトロ趣味のファンにも満足の出来。真鍮でできたマジックのためのメカなんてカッコイイのなんの。

第79回アカデミー賞で撮影賞、美術賞を受賞しているのも納得。映画の奇術指導をマジック界のスーパースター・デイビッド・カッパーフィールドが担当していることからも、マジックとして十分見応えがあります。今をときめくヒュー・ジャックマンも主演していますよ。

お待ちかねニコラ・テスラも登場


そして一番お薦めのポイント。あの超人・ニコラ・テスラが出てくることなんです! スチームパンクマニアのあなたならもちろんご存じですよね、エジソンと争った天才発明家テスラが、テスラコイル(的なある装置)をバックに電撃バリバリ轟かせて登場するシーンなんざ、あなた、感涙もんですぜ。しかも演じているのはその妖艶さで一世を風靡したデヴィッド・ボウイ。美中年になったかつての美青年ロック・スターの怪演をとくと見よ。
ニコラ・テスラ -エジソンの最大のライバルにして天才科学者の数奇な人生-
狂気のマッドサイエンティスト? それとも世界を変えた天才? エジソンの最大のライバルとも言われるニコラ・テスラとはいったいどんな人物なのでしょうか。 彼の数奇な生涯をご紹介します。

「決して映画の結末を話さないで」

この映画では「トリック」が最大の魅力となっています。だからクリストファー・ノーラン監督は「決して映画の結末を話さないで」と言っています。監督との約束だからもちろん私も言いませんよ。ですがネットの映画評をあちこち読むと、さらっとトリックを書いてあるページが多々あります。Amazonや楽天のレビューなどもうかつに読んではいけません。十分注意しましょう。

マジシャンとしての生き方

この映画の魅力は確かに観客をあっと言わせるトリックにあります。しかしたとえ途中でそのトリックが分かったとしても、面白さが全くなくなってしまうわけではありません。『プレステージ』は単にマジックのステージを映しただけの奇術映画ではないからです。

冷たいジョッキを脇に挟んでいたマーリニのトリックを知ったときと同じく、あなたはマジシャンという人々の生き方、業(ごう)の深さにきっと衝撃を受けることでしょう。

本当にやったのだと思いこませる


脱出奇術王・フーディーニ(1874~1926)の言葉にこんなものがあります

ショウマンシップの秘密は、実際に演者がやってみせたことにあるのではなく、好奇心に満ちあふれた観客に、演者が本当にやったのだと思い込ませるところにある

ハリー・フーディーニ

マーリニのように「ビールの冷たさなどなんてことないさ」と思えなければ偉大なマジシャンにはなれないかもしれません。しかし『プレステージ』のロバートとアルフレッドがフーディーニの言葉の「真の意味」を心に留めていたら──と心がちりちりする映画でした。

蒸気夫人
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