CD「川畑文子」大正生まれの天才ダンサー&歌姫

スチームパンクに似合う音楽って何でしょう? ノスタルジックなジャズや退廃的なアルゼンチンタンゴかしら? 今日ご紹介するのは大正生まれの天才ダンサー&歌姫・川端文子です。
川畑文子

『上海バンスキング』吉田日出子と川畑文子


彼女はロサンゼルスやニューヨークで天才ダンサーとして人気を博し、日本でもセンセーションを巻き起こしました。ジャズもタンゴもラテンも自由自在。歌も踊りもこなす文子は「唄はマレーネ・ディートリッヒ、踊りはジョセフィン・ベイカー」と評された大スタアでした。

私が川畑文子を知ったのはもう20年近く前の学生時代。渋谷のシアターコクーンで上演していたミュージカル『上海バンスキング』を見てヒロイン・まどかを演じる吉田日出子の歌に大変衝撃を受けました。甘く夢見るような唄声は、魔都・上海の雰囲気にぴったりで、TVで流れる流行歌とは全く違っていました。

「私が聴きたかったのはこれだ!」とすぐさま売店でCDを買い求め、その後何度も聴きました。そして吉田日出子が徹底的に歌唱法を研究してそっくり真似たのが、川端文子という歌手であったと知りました。

20年近く恋焦がれた唄声


しかし昭和初期のレコードはなかなか手に入れることができませんでした。当時はAmazonもYoutubeもなかったため捜索は困難。私は川畑文子に恋焦がれていたにもかかわらず、20年近く彼女の唄声を聴くことは叶いませんでした。

しかし! 2012年に㈱ブリッジより、川畑文子のアルバム全3巻が発売され、コロンビア発売の40曲とテイチク発売の22曲を聴けることになったのです。ハレルヤ!

アメリカでの華々しい活躍

川畑文子
川畑文子は大正5年(1916)、アリス・川畑・文子の名前でハワイに生まれました。12歳からダンス(バレエ)を習い始め、13歳で初舞台。脚を頭上まで持ち上げるハイキックという技で一躍有名になり、ロサンゼルスからニューヨークへと活躍の舞台を移しました。当時の大興業会社RKOと契約、ヴォードヴィル・シアターで全米公演──と華々しい活躍をしました。

本場アメリカで認められる技術

川畑文子
アジア人差別の激しかった当時のアメリカで、日系人がこれだけの活躍をするのは異例のことです。しかも彼女が売りにしていたのはジャズやタップダンス。本場のアメリカ人が天才ダンサーとして認めたのですから、ずば抜けた技術があったのでしょうね。その名声は遠い日本にも鳴り響いていたのでした。

日本でも大人気に

川畑文子
文子が来日したのは昭和7年(1932)16歳の時です。すぐにコロンビアレコードと契約を結び、2年間で34曲も録音発売した人気歌手になりました。さもありなん。

165センチの長身、美しい容姿、本場で認められたダンスのステップ、英語と日本語のバイリンガル──。昭和はじめの日本人にとって眩しく映ったに違いありません。昭和8年(1933)には収容客数4000人の大劇場、「陸の龍宮」とうたわれた日劇のこけら落とし公演でも主演を務めています。

たった10年間の芸能生活

川畑文子
文子は昭和14年(1939)に子供の頃の家庭教師だった男性と結婚引退しました。13歳から瞬く間にスターダムを駆け上がり23歳で引退。たった10年間の芸能生活でしたが、アメリカ・日本2つの国で活躍し、日本のジャズやダンス界の発展に大きく貢献しました。晩年はアメリカで暮らし、2007年に90歳で亡くなりました。

アナログ録音ならではの味わい

川畑文子の唄声は甘く、英語なまりの日本語がとってもチャーミング。しかしクオンタイズで修正されたデジタル録音CDを聴きなれている現代人にとって、アナログ録音の音の不安定さや雑音が気になるかもしれません。それに文子の一番の魅力はダンスであり、彼女よりも上手な歌手は他にもたくさんいたでしょう。でも彼女のたどたどしいゆらいだ唄声はいかにもはかなげで、大正・昭和初期の雰囲気に良く合っていると思うのです。

レトロ感たっぷりの歌詞

川畑文子
歌詞も決して秋元康が書きそうにないレトロ感にあふれています。『泣かせて頂戴~コケティッシュ・エキゾチック篇~』に収録されている『嘆きの天使 Fallin’ in Love Again』は、独映画『嘆きの天使』でマレーネ・ディートリッヒが男性を誘惑するシーンで歌われています。

おぼこ娘の儚(はかなさ)は
思ひつめる心よ
甘い言葉にのせられて
つい手管にかゝるの

『嘆きの天使 Fallin’ in Love Again』

おぼこ娘! 手管! このセンス、しびれるではないですか。これでも当時はギリギリのセクシーソングです。デートリッヒがしたように歌いながら足のチラ見せなんてしたら警察にしょっぴかれちゃいますからね。

3巻目は明日発売!

川畑文子
大正・昭和初期の曲がたくさん詰まった川畑文子アルバムは『泣かせて頂戴~コケティッシュ・エキゾチック篇~』、『GOODY GOODY~JAZZ スタンダード篇~』、『貴方とならば・月光價千金~映画・ステージショー篇~』の全3巻。です。あなたもきっと川畑文子のとりこになるはずですよ。




蒸気夫人
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