ドラマ『ダウントン・アビー』で学ぶ、激動の英国近代史

20世紀始めの英国・伯爵家と使用人を描いたドラマ『ダウントン・アビー』。数々の賞を受賞し、全世界の視聴者が1000万人を超える大人気ドラマです。激動の時代を御覧ください。
ダウントン・アビー

『ダウントン・アビー』あらすじ

1910年代のイギリス田園地帯の大邸宅「ダウントン・アビー」。現当主のグランサム伯爵夫妻を悩ませていたのは、限嗣相続(げんしそうぞく)制度であった。財産を継げるのは男子1名のみ。しかし彼らには3人の娘しかいなかった。

タイタニック号沈没事故によって長女の婚約者を亡くした伯爵家。財産の行方は? 娘たちの愛の行方はどうなるのか? 執事・メイドたちの世界でも新たな動きが生じる。そして第一次世界大戦開戦の激動の時代の波に人々は巻き込まれていく。

ハイソサエティなメロドラマ


ハイソサエティなメロドラマ」と評されているように、過激な恋愛模様、愛憎劇が人気となっている『ダウントン・アビー』。次から次へと起こる波乱。華麗な衣装、豪華なロケーション(本物の伯爵家の城で撮影されている)も見どころです。

スチームパンクの時代っていつ?

ダウントン・アビー
ところで「スチームパンクの時代」って具体的にはいつのことでしょう? 100年前? 150年前? ちょっとおさらいしておきましょうか。

こちらの年表を御覧ください(※クリックすると別ウィンドウで大きな画像で見られます)。英国王室、日本の皇室、英国名探偵、などをわかりやすく年表で並べてみました。

アメリカのウェスタンスチームパンク、中東スチームパンク、魔都上海スチームパンクなど世界各国様々なスチームパンクがあって良いのですが、ここでは英国と日本のみに言及します。

19世紀半ばから第一次世界大戦ぐらいまで

私見ですが、大雑把に言えば「スチームパンク(蒸気機関・スチームエンジンによる動力)は19世紀半ばから第一次世界大戦ぐらいまでの世界観」ではないかなと思います。さらに狭義では「第一次世界大戦から20世紀半ばまではディーゼルパンク(石油・ディーゼルエンジンによる動力)の時代」と見てよいでしょう。

つまり
【スチームパンク時代】……明治時代〜大正時代、シャーロック・ホームズ
【ディーゼルパンク時代】……大正末期〜昭和初期、エルキュール・ポワロ

表にはありませんが、滑らかで流れるようなデザインのアール・ヌーヴォーはスチームパンク時代、左右対称でカクカクしたアール・デコはディーゼルパンク時代の様式です。

ディーゼルパンク作品


だから真鍮や歯車蒸気機関よりも、クラシック自動車、世界大戦、ガスマスクや戦車、軍服に魅力を感じる方はむしろディーゼルパンカーなのかもしれませんね。映画でいうと『スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー』(1930年代が舞台)などがディーゼルパンク作品です。

SFの世界はなんでもアリです。現代までずっとヴィクトリア朝や明治時代の世界観が続いていたら──という設定で書かれているものもあるでしょうが、だいたい世界大戦がおおよその境目と考えておけば目安になるでしょう。

大転換期を描いた『ダウントン・アビー』

ダウントン・アビー
『ダウントン・アビー』に話を戻しますと、このドラマではスチームパンクの時代からディーゼルパンクの時代に移り変わる、大転換期の英国の歴史を学ぶことができるのです。地方の田園地帯にあるダウントン・アビーではヴィクトリア女王の時代、エドワード7世の時代、ジョージ5世の時代の文化が混在しています。

グランサム伯爵・ロバートの母バイオレットは裾を引きずるようなヴィクトリアンドレスに、ステッキ・ハット・手袋を常に身につけています。一方3人の娘たちはくるぶしが出る丈のスカート。すでに馬車ではなく自動車が走り回っていますが、執事はヴィクトリア朝のスーツ。メイドたちも丈の長いスカートにフリルのエプロンです。

ダウントン・アビーはイギリス・バークシャー州にある本物のお城・ハイクレア城を借りきって撮影されています。領主のカナーヴォン伯爵夫妻の一族は17世紀からこの地方を治めています。

そんなクラシカルなお城にも近代化の波が訪れます。三女が女性参政権運動に傾倒していたり、メイドが女性の自立を求めて秘書になるために奮闘していたりします。

スチームパンカー・ディーゼルパンカーへ

ダウントン・アビー
個人的には、私はスチームパンクを単なる表面的なファッションだけでとらえてほしくはないと思っています。単に「歯車がついた茶色っぽい洋服を着ておけばいいんでしょ」というのはあまりにももったいない。スチームパンクにはもっと深い世界があります。歴史や文化を学び、多角的な知識や情報を得た方がずっと楽しめると考えています。

『ダウントン・アビー』はスチームパンカー、ネオヴィクトリアン好きの方にとっては当時の文化を知る上で大変勉強になるでしょう。執事が毎朝新聞にアイロンをかけること、紐を引くと鳴る使用人ベルの仕組みや貴族のキツネ狩りの様子、メイドのベッドメイク、社交界デビューのドレス──繰り返し見る度に発見があります。

忠実に再現された戦争シーン

ダウントン・アビー
第二シーズンでは第一次世界大戦が勃発。身分制度が徐々に崩壊を始め、戦争によって科学が劇的に進歩する激動の時代へと人々が巻き込まれていきます。忠実に再現された戦争シーンは必見の映像です。貴重な資料としてスチームパンカー、ディーゼルパンカーともにこのドラマをぜひお勧めしたいと思います。

書籍版『ダウントン・アビー シーズン1・2公式ガイド』

ダウントン・アビー
それから早川書房から発売されている『ダウントン・アビー 華麗なる英国貴族の館 シーズン1・2公式ガイド』についてもちょこっと。当時の文化、歴史、撮影の裏側などについて解説した、303ページ、全ページカラーの豪華本です。お値段3800円とこれまたゴージャスなのですが、思い切って買って良かったです。この時期の歴史が一気に頭のなかで整理されました。

華麗なる世界をどうぞ

ダウントン・アビー
純粋に人間ドラマとしてもとても面白い作品です。でもご用心。一話見てしまうと次々に続けて見たくなってしまいますからね。華麗なる世界をどうぞ楽しんでくださいな。

【追記】2015年01月01日。

ミステリマガジン掲載
この記事を見てくださった、早川書房編集部の方からご連絡があり、中・高校生の頃から愛読している『ハヤカワミステリマガジン』にコラムを書かせていただきました。2015年02月号。特集は「ダウントン・アビー」。ディーゼルパンクについて解説しました。

『ハヤカワミステリマガジン』にコラムが掲載されました
中・高校生の頃から愛読している『ハヤカワミステリマガジン』にコラムを書かせていただきました。2015年02月号。特集は「ダウントン・アビー」。ディーゼルパンクについて解説。

蒸気夫人

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