コミック『ヴィクトリアン・アンデッド シャーロック・ホームズvsゾンビ』

様々な敵と闘い世界を救ってきた名探偵ホームズ。しかしシャーロキアンの想像の斜め上を行く新たな敵が現れた。それはゾンビ! はたしてホームズは英国を救うことができるのか!?
ヴィクトリアン・アンデッド シャーロック・ホームズvsゾンビ

さあ行くぞワトソン。獲物はついに放たれた。

『ヴィクトリアン・アンデッド シャーロック・ホームズvsゾンビ』P096

1854年。彗星がロンドンの夜空を横切ったことで、”ある疫病”が発生した。スノウ医師とホワイトヘッド牧師の尽力によりパンデミックは回避されたが、 44年の時を経て英国は歩きまわる死者の巣窟となってしまった。名探偵シャーロック・ホームズと医師ワトソンがゾンビ大発生事件の謎に迫る。

シャーロック・ホームズの好敵手

ヴィクトリアン・アンデッド シャーロック・ホームズvsゾンビ
正典ではホームズの宿敵はモリアーティー教授ですね。そして一番有名なホームズパスティーシュの敵と言えば、モーリス・ルブラン『ルパン対ホームズ』のアルセーヌ・ルパンでしょう。

他にも切り裂きジャック、ハイド氏、透明人間、火星人──世界的名探偵シャーロック・ホームズは、古今東西たくさんのパロディ小説・映画・コミックにおいて敵と戦ってきました。

しかしこのコミックでホームズが戦うのはなんとゾンビ。しかもロンドンが陥落するほどの大群のゾンビなのです!

英国史の実在の人物

もうタイトルだけで出落ちのような『ヴィクトリアン・アンデッド シャーロック・ホームズvsゾンビ』。しかしその内容はシャーロキアンのみならず、ヴィクトリア朝の文化がお好きな方、スチームパンカーをニヤリとさせるセリフが満載です。

たとえば冒頭に登場するスノウ医師とホワイトヘッド牧師は実在の人物。彼らは1854年にロンドンで大発生したコレラの原因を突き止め、蔓延を防いだ偉人です。スノウ医師はヴィクトリア女王にクロロホルムを処方し、女王の8人目の子供の無痛分娩に世界で初めて成功しました。

その彼らが防いだものは実はコレラ禍ではなくなんと「ゾンビ感染」だったというのだから引き込まれずにはいられません。

ちなみにその原因となる1854年の大彗星(C/1854 F1)も実際の出来事。この彗星には名前がなく「1854年の大彗星」と呼ばれています。日本では幕末の医者・羽山維碩(はやまいせき)が観測しています。

スチームパンクな仕掛け

襲い来る自動人形に対して「小型で演算処理可能は、複雑な装置に操られている。チャールズ・バベッジでも想像しなかったろう」、そして「やはり更なる(ゾンビの)大発生を予期していたから、あのような独特な武器と装甲を備えた海兵隊や、実に驚異的な乗り物があるのですね!」というホームズのセリフからも分かるように、スチームパンクなメカもたくさん登場します。

ホームズ物語のあの人物も出演

実在の人々に混ざって、シャーロック・ホームズシリーズの登場人物も出演。ご存知ホームズの兄・マイクロフト・ホームズ、犯罪界のナポレオンこと宿敵・モリアーティー教授、『空き家の冒険』のセバスチャン・モラン大佐、『第二のしみ』のトリローニー・ホープ、ベリンジャー卿なんてマニアックな方も脇を固めます。

アメリカン・コミックスのホームズ

本書は2010年にワイルドストームから出版された全6巻のアメリカン・コミックブックリミテッドシリーズの『Victorian Undead: Sherlock Holmes vs Zombies』が元になっています。原作はイアン・エジントン(Ian Edginton)、作画はダヴィデ・ファッブリ(Davide Fabbri)です。

典型的なアメリカンコミックスなので、絵に抵抗がある方もいらっしゃるかもしれません。でも全ページカラーでコマ一つ一つの完成度が高く非常に美しいんですよ。コマの端に書き込まれた小道具(ホームズの探偵グッズなど)や、衣装、部屋の内装──などヴィクトリアン趣味の皆様はストーリーだけでなく絵もじっくり堪能できる逸品。資料としても使えそうな一冊です。

英国とゾンビ


古き好きイギリスとゾンビをかけたパロディ小説としては『高慢と偏見とゾンビ(Pride and Prejudice and Zombies)』(セス・グレアム=スミス Seth Grahame-Smith2009)、『シャーロック・ホームズとゾンビ事件(Sherlock Holmes and the Zombie Problem)』(ニック・トーマス Nick S. Thomas 2010)などがあります。

映画『高慢と偏見とゾンビ』は2016年に公開されますが、『ヴィクトリアン・アンデッド シャーロック・ホームズvsゾンビ』も映画化に向いている作品なのではと思います。映画化を期待。でもひょっとしたらもうハリウッドの水面下ではお話があるかもしれませんね。

続編は未翻訳

本書には続編の『ヴィクトリアン・アンデッド・スペシャル シャーロック・ホームズvsジキル/ハイド』(2010)、『ヴィクトリアン・アンデッドⅡ シャーロック・ホームズvsドラキュラ』(2011)が発表されています。

今度の敵はジキルとハイドのハイド、そしてドラキュラなんて、気になりますね。でも残念ながら日本語版は出ていません。邦訳されることを期待しています。

みるみる引き込まれること間違いなし

ヴィクトリアン・アンデッド シャーロック・ホームズvsゾンビ
スチームパンカー、シャーロキアン、ヴィクトリアン──三者にオススメできる『ヴィクトリアン・アンデッド シャーロック・ホームズvsゾンビ』。「おいおい、ゾンビって……」と苦笑しているあなたも、一旦手に取ればきっと夢中になって読み進めること請け合いですよ。

蒸気夫人
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