モンスター総出演&スチームパンクメカ『ヴァン・ヘルシング』

ヴァン・ヘルシング
ヴァン・ヘルシング』は狼男、ドラキュラ、フランケンシュタイン、ジキル博士とハイド氏──とモンスター総出演の冒険活劇。美しいスチームパンクガジェットがたくさん登場します。

19世紀のヨーロッパ。バチカンの密命により世界中の伝説の怪物を狩るヴァン・ヘルシング。彼は最強の敵・ドラキュラ伯爵を倒すためにトランシルバニアへと向かう。そこで長年に渡りドラキュラと死闘を繰り広げてきたヴァレリアス一族の兄妹と出会い、妹の王女・アナと協力し村を襲うドラキュラとその花嫁たちと戦う──

ヒュー・ジャックマン主演のアクション大作

『ヴァン・ヘルシング』はアクションファンタジー映画。19世紀末ヴィクトリア朝のホラー小説『吸血鬼ドラキュラ』をモチーフに、ゴシックSF『フランケンシュタイン』、東ヨーロッパの伝説の獣・狼男、『ジキル博士とハイド氏』のハイドも登場するキャラクター映画でもあります。

主人公のモンスターハンター・ヴァン・ヘルシングを演じるのは『X-MEN』ウルヴァリン役のヒュー・ジャックマン。監督は『ハムナプトラ』シリーズのスティーブン・ソマーズです。

若すぎるヴァン・ヘルシング教授?

「ヴァン・ヘルシング教授がヒュー・ジャックマン? 若すぎない?」と思った方もいらっしゃるでしょう。原作のブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』に登場するヘルシング博士は初老の精神医学者。

映画版でもこれまでピーター・カッシング、ローレンス・オリビエ、アンソニー・ホプキンスなど大物俳優が演じていますが、これほど若いヘルシングは初めてではないかと。野性味溢れるマッチョなイケメンヘルシングです。

美男美女総出演

そしてアナ王女演じる、ケイト・ベッキンセール、兄王ヴェルカン役のウィル・ケンプだけでなくドラキュラ伯爵も、花嫁三人組みも、あっちもこっちも美男美女。唯一の醜男はヴィクター・フランケンシュタイン制作の人造人間(※)ですが、まあこれはお約束。

イギリスの女性ホラー作家メアリ・シェリー原作の『フランケンシュタイン、すなわち現代のプロメシュース』に登場する人造人間は「フランケンシュタイン」という名前ではない。その人造人間を作った男の姓がフランケンシュタインなのである。

ではなぜ混同されているのかというと、小説中では主人公・ヴィクター・フフランケンシュタインが怪物に名前を付けなかったからで、正確には「フランケンシュタインの怪物」と呼ぶのが正しい。

またよく「フランケンシュタイン博士」と呼ばれるが、原作中では単なる一学生に過ぎない。大学生が死体をつなぎ合わせて電気ショックによって蘇らせる──など、現代ではとうてい通用しないSFであるが、書かれた時代(1816年)を考えると、SF小説の先駆者として評価できる。

武器、衣装に注目

ヘルシングが手にする武器の数々、バチカンの秘密結社で開発される兵器は必見。スチームパンク大好きなあなたがワクワクするガジェットが次から次へと登場します。以前、なぜか画面に出てくるラジオメータについても書いたことがありましたね。女性的にはアナ王女の衣装に注目。アンダーバストまでの革のコルセットは美しいですよ。

光で回る不思議グッズ・ラジオメータ(ライトミル)とクルックス
ラジオメータ。赤外線などの放射エネルギーを吸収させることで得られる運動──つまり光が当たると羽車が回り、暗いと動かない。なんだか生き物のようで実に愛らしいではないですか。

『バンパイアハンターD』の影響

ヘルシングの衣装──つば広の帽子、ロングヘア、ロングコート「どこかで見たような」そう思った方、これまたマニアと見た。実は菊地秀行原作・天野喜孝挿絵の『バンパイアハンターDシリーズ(朝日ソノラマ)がモデルになってるんです。アニメ化、映画化、漫画化、ゲーム化もされています。もちろん私もシリーズ全作品を読んでいますよ。

菊地秀行氏は数多くのシリーズものを出している多作・売れっ子作家。ソノラマ文庫の双璧・夢枕獏とともにジュブナイル小説界に旋風を巻き起こした。

さて次の企画は」様のブログによると以下のように書かれています。

ソマーズ監督は、制作を始める前にストーリーボードの大半を作っている若手スタッフ連中から「『バンパイアハンターD』を監督も見なきゃ駄目だ」と言われてみせられたらしい。それで見てみたら「おお、これは!」って感じで、スタッフが描く武器がアニメの影響をもろに受けていたとのこと(笑) デザイン第一稿のヴァン・ヘルシングはやっぱり「つば広テンガロンハット」「防護服の上にマントを羽織った全身黒ずくめ」とDそのものだったようです。

さて次の企画は

あくまで娯楽作品

あくまで娯楽作品なので、モンスターの年代がずれていることや2時間12分が娯楽映画にしては長すぎることなどは全く気にならないのですが。でも個人的にこれはちょっと……と思わずにいられない点が一点。

『フランケンシュタイン、すなわち現代のプロメシュース(1816)』と『吸血鬼ドラキュラ(1897)』。前者の作者メアリー・シェリー(1797~1851)と、後者の作者ブラム・ストーカー(1847~1912)は80年もの開きがある。風俗、文化もかなり違っているため、この2モンスターを同時期のものとして扱うのは難しいかも。

このアクションはもったいない……

それはアナ王女役のケイト・ベッキンセールのアクション! ワイヤーアクションはタイミングがあってないし、走り方はどう見てもノロい。設定では「かなりのじゃじゃ馬・最強な女性」となっているので、この運動神経のひどさは見ていて辛すぎる。

ケイト・ベッキンセールの美貌は素晴らしいけど、もうちょっとアクションを頑張ってほしかった。百歩譲って、走るシーンだけでもスタント女優の吹き替えにした方が良かったのでは。

【蒸気夫人(マダムスチーム)】

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