「明治村滞在記(3)」皇室ご一家の走る宮殿・御料車(ごりょうしゃ)

御料車(ごりょうしゃ)とは、皇室の方々がご利用になる専用鉄道車両。御料とは身分の高い方の所有物という意味です。日本が誇る職人の技術の粋を集めた豪華絢爛な列車をご覧あれ。
明治村・御料車

御料車の内部は保存のために照明が消されているのですが、フラッシュを使用すると窓ガラスに反射してしまいうまく写せませんでした。この記事では実際の御料車と展示パネルの写真を使用していますが、全体的に暗い色調になっていますことをご了承ください。

初期の鉄造建築・鉄道局新橋工場

明治村・御料車
愛知県犬山市の明治村。こちらの建物は鉄道局新橋工場です。1889(明治22)年、東京新橋駅構内に鉄道の木工場として建設されました。国産の初期の鉄造建築として大変貴重なもので、1919(大正8)年に大井工場に移築された後も、昭和41年まで使用されました。

明治時代の5号御料車と6号御料車

明治村・御料車
中に入ってみると目に飛び込んでくる豪華な列車! 1902年(明治35年)製造の5号御料車、1910年(明治43年)製造の6号御料車です。5号車は全長16メートル、総重量22トンの木製2軸ボギー車。6号車は全長20メートル、総重量33.5トンの木製3軸ボギー車です。

1号〜4号車は現在どうなっている?

明治村・御料車
1号御料車、2号御料車は現在さいたま市の鉄道博物館にあり、3号車は昭和28年に13号に改番され現在は東京総合車両センターの御料車庫に保存されています。4号御料車は1930(昭和5)年に廃車となり、翌年に解体。そして5号車、6号車はここ明治村に展示されています。

【5号御料車】御座所(皇后陛下用車輌)

明治村・御料車
5号御料車は初の皇后陛下(昭憲皇太后)用車輌として制作されたものです。これは御座所(ござしょ)。皇后陛下がお過ごしになるおましどころです。濃赤色の緞子(どんす)がはられたふかふかの椅子。背掛布には菊の御紋と唐草の金糸の刺繍が施されています。長椅子の下には暖房用の管まで設置されていたんですって。

【5号御料車】天井部分(帰雁来燕図)

明治村・御料車
天井は桐板に書かれた帰雁来燕(きがんらいえん)図。雁も燕も渡り鳥で、日本中行ったり来たりの鳥です。ご旅行をなさる皇后陛下にはぴったりの絵ではないですか。画家は川端玉章(かわばたぎょくしょう)。東京美術学校教諭から帝室技芸員に任命された、丸山派最後の画人です。

【5号御料車】皇后陛下の御寝室

明治村・御料車
こちらは御座所の隣にある皇后陛下の御寝室。桜と紅葉が一本の木に描かれていて、日本の四季の美しさが表現されています。天蓋も紅色で豪華ですね。御料車は夜に走ることはないのですが、皇后陛下がお加減がよろしくない時などにご利用なさったそうです。

【5号御料車】皇后陛下の御寝台

明治村・御料車
皇后陛下の御寝台です。ビロードばりでしょうか。赤を基調色とした寝室で素敵ですよね。ゴールドのカーテンとのコントラストが際立ちます。ベッド横に彫りこまれた彫刻も実に細々としていて職人技が光りますね。

【5号御料車】御閑所(トイレ)

明治村・御料車
不敬罪で縛り首になりそうですが、好奇心旺盛な皆様のためにご紹介。御閑所(ごかんじょ)──おトイレのことです。藤が描かれたすりガラスの向こうに避箱(ひばこ:便器)があります。びっしりと草木が描かれた床に漆塗りの避箱。美しいトイレですなー。

【6号御料車】御料車の中の最高傑作・走る宮殿

明治村・御料車
明治天皇陛下専用列車としては最後のものとなる6号御料車です。数ある御料車の中でももっとも壮麗な作りと言われ、「走る宮殿」という異名があるんですよ。列車内部は前から大膳室(だいぜんしつ)、侍従室、御座所、侍従室、御寝室、御厠となっています。

【6号御料車】侍従室の扉上部の欄間

明治村・御料車
侍従室です。侍従室は御座所の両側に2箇所あります。両側に天皇陛下の乗降口があるためやや広い作り。扉上部の欄間(らんま)には、漆と螺鈿の装飾。天井は御座所と同じ格天井式で、蜀江錦張りとなっています。溜息がでるほど素晴らしい工芸です。

【6号御料車】御座所

明治村・御料車
天皇陛下の御座所。さきほどさらっと流してしまいましたが、蜀江錦(しょっこうきん)とは、3世紀の蜀の国(中国四川地方)で生産された絹織物の名前で、花の模様などを中央に、八角形を組み合わせた亀甲文様が有名です。天皇家ですから中央部の花は十六重弁の菊。欄間は七宝で描かれた鳳凰、扉は漆塗りと螺鈿です。

【6号御料車】天皇陛下の御寝室

明治村・御料車
御寝室の内装は御座所と同じデザインです。奥に見えるのが寝台。前後に菊の御紋の彫刻が入っています。金糸で縁どられたダークレッドのビロードの天蓋がつけられています。何から何まで一級の工芸品。いったいどれくらいの数の職人がどれだけの年月かけて作ったのでしょう。

【6号御料車】三種の神器を置くための御剣・御璽(ぎょじ)棚

明治村・御料車
こちらは寝台の向かい側に設けられた御剣と御璽(ぎょじ)の棚。御剣は三種の神器(※)の一つの草薙剣(くさなぎのつるぎ)、御璽はもう一つの八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)のこと。これらはいつも天皇陛下の近くに置かれていなければならなかったため、御料車にもこんな棚がしつらえてあったんですね。

さらにもう一つは八咫鏡(やたのかがみ)であると言われている。三種の神器が何であるか、また本当に存在するかは諸説あるが、一応この列車の説明書では御剣と御璽のための棚となっている。私は映像で三種の神器をしっかと抱いた侍従が御料車に乗り込むところを見たことがあるので、おそらく形式的にでも三種の神器は存在することになっているのだと思う。

【6号御料車】御化粧台と御厠(トイレ)

明治村・御料車
御化粧台と御厠です。驚くべきことに洋式便器なんですよ。洋式の便器が備え付けられたのはこの6号御料車が初めてなんですって。漆に金蒔絵の壮麗なこと! この究極の和洋折衷っぷりに身悶えするほどです。

地方の文明開化を進めた皇室の方々の地方視察

明治村・御料車

明治天皇陛下、裕仁親王殿下の地方視察は、日本の文明開化の大きな力となっていました。明治初期においては、電灯が灯り、電話網が敷かれ、道路が整備され、上下水道設備が発達していたのは都市部のみでした。

しかし「勿体無くも賢くも、おらが村に御料車で陛下がおでましになる!」となれば、地方でも急ピッチで大規模工事が進んだのです。

「皇恩」とはなにか?

明治村・御料車

皇恩(こうおん)ということばがあります。皇室の方々により幸せをたまわり恩義を感じる心のことです。

明治時代の人々にとっては当たり前の感情でした。御料車による地方視察がなければ、地方の文明開化はもっと遅れていたことでしょう。現在の天皇陛下・皇后陛下は新幹線をお使いになりますが、明治時代の御料車は人々が皇恩に浴する素晴らしい役割を担っていたのです。

また特別公開がありますように!

明治村・御料車
引退後の今、明治村でのんびり第二の人生を送っている御料車。普段はガラス越しにしか中を見られませんが、過去には何度か特別公開のイベントも開催されています。その時はどうぞお見逃しなく訪れてみてくださいね。

蒸気夫人

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