「骨格標本・豚足編」キッチンで作る標本2

手羽先の骨格標本に続きまして、今回は哺乳類の骨格標本作りに挑戦。この可愛らしい纏足(てんそく)ような足の持ち主は誰でしょう? 正解はブタ。豚足で骨格標本を作ってみました。
豚足の骨格標本

「骨格標本・手羽先編」キッチンで作る標本1
スチームパンクな部屋、理科趣味に欠かせない動物の骨格標本。今回は簡単な骨格標本の作り方をご紹介。美味しい手羽先を食べたらレッツ骨格標本。夏休みの工作の宿題にも最適です。

骨格標本の作り方(1)豚足を入手する

豚足の骨格標本
標本作りの最大の難関は死体を手に入れること。野生動物を捕獲して標本にするなど法律的にも倫理的にも許されません。でも豚足ならお肉屋さんで簡単に入手できます。だいたい1本100円~300円ぐらい。

ただし注意点として、食べやすいようにつま先を切り落としていたり、半分に割ってあるものも売っていますので、手首・足首から先が完全にそろっているものを購入すること

【2】美味しく感謝しつつ食べる

豚足の骨格標本
実は私、豚足を食べるのは初めて。料理も初めて。ネットのレシピサイトを検索して作ってみたものの、どうも見た目がグロっぽい……。

しかし! なにこれ、めちゃくちゃ美味しいんですけど! ぷりぷりした歯ごたえが最高。やみつきになった私は、ワイン蒸し、甘辛煮、スペアリブ……といくつも作って舌鼓。個人的な好みですが甘辛く煮たものが一番美味しいなあ。ブタさんありがとう。私たちはこうして命を頂いているのです。感謝。

【3】煮込んで肉を取る

豚足の骨格標本
あまりに美味しくて骨だけ状態になってしまったので、肉をこそげとる手間が省けました。骨と水を鍋に入れてぐつぐつ煮ます。トンコツスープを取るぐらいですから骨にはたっぷり脂が入っています。しばらくすると大量に脂が浮いてきますので、何度か水を換えて2時間ほど煮込みましょう。

【4】クリーニングと煮込みをくり返す

豚足の骨格標本
煮た後ざるにあけて水で洗いながら、残った肉や軟骨を歯ブラシなどでこそぎとります。おおよそ取れたらまた鍋で煮込みます。実は骨が茶色っぽいのは脂の色。煮込めば煮込むほど外にしみ出して骨が白くなりますよ。骨をクリーニング→煮込む(1時間ほど)→クリーニング→煮込むを何度かくり返します。

【5】ポリデントで軟骨取り

豚足の骨格標本
軟骨が骨の隙間に入っていて取りにくい場合は、入れ歯洗浄剤(ポリデント)を2、3個放り込みます。軟骨が透明なゼリー状になって取れやすくなります。ぐらぐら煮立たせない低めの温度でゆっくり加熱しました。保温機などがあれば半日できれいになります。常温では2、3日漬ける人もいるみたいですよ。漬けたあと水洗いして歯ブラシなどでクリーニング。

【6】脱脂(ベンジン法・アセトン法)

豚足の骨格標本
さらに脱脂します。ベンジンとアセトンの2種類でやってみました。ベンジンは薬局で500ml・500円ぐらい。アセトンは100円ショップでマニキュア除光液として売っています(アセトンフリーのものはNG)。

アセトンの方は3日ほどで脂が抜け出ました。ベンジンは2週間ぐらいかかる上に、今ひとつ脂が抜けない感じ。アセトンの方がお薦めです。どちらも蒸発しやすいのでジャムの瓶に入れて蓋をしっかりしめましょう。ベンジンは発火しますので取り扱い注意。ゴム手袋使用のこと。

【7】漂白

豚足の骨格標本
あまり真っ白けなのは作り物っぽいし骨がもろくなるので、ここでやめておいてもよいのですが、もっと白くしたい人はオキシドールで漂白します。これも薬局で売っています。なければキッチン用の漂白剤(ハイターなど)で良いです。

ジャムの瓶にオキシドールを注ぎ込みます。骨がもろくなっている場合は水で薄めてください。10分ぐらいで白くなりはじめます。私は4時間で引き揚げました。こちらも手袋使用で。

脱脂や漂白で薬剤に漬け込む時間は骨の年齢によります。若いブタだとまだしっかり骨ができあがっていないのでもろく、強い薬剤に漬けると折れやすくなります。失敗しないよう観察しながら漬けてくださいね。

【8】よく乾燥させる

豚足の骨格標本
オキシドールから出した骨をよく水洗いして乾かします。新聞紙に広げて1日放置すればカラカラと音がするぐらいに乾燥します。野外で干す場合、ネコやイヌ、カラスに持っていかれないように注意してください。

【9】ホットボンドで仮組み

豚足の骨格標本
格好良い形になるようにホットボンドで仮組みします。プラモ作ってるみたいで一番楽しい工程です。「ばらばらになった骨を上手く組み立てられるかな……」とご心配の方、ノープロブレム。

骨と骨はまるでジグソーパズルのように、ぴったり合うようにできています。ピシッと組み合わさったとき「おお!」と感嘆の声をあげたくなるほどです。でも細かい骨は迷うことがあるかも……。

そんな時の心強い味方が『骨の学校 ぼくらの骨格標本のつくり方(盛口満・安田守:木魂社)』という本。「豚足骨継ぎマニュアル」というページには、イラストとともに詳細な骨の解説が書かれています。これを見れば確実に組み立てられます。私も大変お世話になりました。

【10】ドリルで穴あけ

豚足の骨格標本
面倒な方は全ての骨をボンドで接着して終了──でも良いのですが、頑丈な骨格標本にするために、真鍮の針金で芯を作ってつなげることにしました。『骨の学校』でも書いてありますが、接着剤だけで作った骨格標本は年月が経つとあちこちが取れてしまったりするんです。針金などで芯をつくっておけばその心配もありません。

仮組みした骨をバランスをみながらドリルで穴をあけていきます。一度に全部の骨を穴あけすることはできませんから、取り外しながら一つ一つあけます。この穴の位置によって骨格のプロポーションが変わってしまうので注意してください。ドリルで指に穴をあけないよう、手袋を使用しましょう。3本指のクラフトグローブが使いやすいです。

【11】真鍮線を通す

豚足の骨格標本
真鍮線は0.55mm(24番)を使いました。先を5センチ残して、写真のようにコイルを作ります。これは裁縫で言う「玉留め」で、骨がずりおちないようにするためのもの。足の先から骨をビーズみたいに真鍮線に通します。

【12】関節をボンドでとめる

豚足の骨格標本
それぞれの指の関節を接着剤でとめます。ホットボンドや瞬間接着剤が良いです。液体のアロンαだと骨に染みこんでしまいますので、ゼリー状の瞬間接着剤かホットボンドだと骨と骨の隙間に入り込んで、軟骨の代わりにもなって良いですよ。

【13】真鍮線をまとめる

豚足の骨格標本
4本の指に通した真鍮線をまとめます。第3指、第4指の中手骨(足を作っている人は「中足骨)にドリルで穴をあけて、第2指、第5指の中手骨から出た真鍮線を通します。これらの針金はそれぞれペンチでねじって止めておきます。
針金を隠すように手首、足首にあたる手根骨、足根骨を接着剤でつけます。はみだした接着剤は後でナイフで削ります。また中手骨の根本の骨のでっぱりにドリルで穴をあけて、針金をとおしておきましょう。

【14】種子骨を接着する

豚足の骨格標本
種子骨をつけます。全部の指で12個あります。とても小さいパーツなのでなくしてしまった人もいるかもしれませんが、とりあえずあるだけ接着しましょう。どこに何の種子骨が入るかは『骨の学校』が詳しいです。これで全ての骨のパーツをつけることができました。

全て接着し終わった豚足

豚足の骨格標本
こんな感じになりましたか? 私の作った豚足は、骨の形状からすると右側の前足だと思われます。左右、手足の見分け方の一つは、足の先の蹄。蹄は左右の大きさが違っていて、大きい方が外側、小さい方は内側。これで左右が分かりますね。二つ目は中手骨の重なり具合で左右を区別します。前足か後ろ足かは手根骨と足根骨の形と数が違うので見分けがつきますよ。

【15】飾り台を作る

豚足の骨格標本
飾り台にとりつけましょう。前回手羽先の骨格標本で作ったのと同じく、飾り台にニスを塗ります。3ヶ所にドリルで穴をあけて、直径3ミリの真鍮管を立てて接着。根本にはハトメの金具を接着するとより本格的になります。

末端の指骨2つから出た真鍮線2本と、中手骨のでっぱりに通した真鍮線1本の計3本を、真鍮管に通して台の裏側まで出します。余分な真鍮線をカットして、コの字型に曲げ、トンカチで台に打ち込みます。しっかりとペンチで真鍮線をひっぱってゆるまないようにするのがコツ。

【16】フエルト接着と品名差しのラベル作り

豚足の骨格標本
金具で傷がつかないように台の裏側にフエルトを貼りました。品名差しの金具には、学名「Sus scrofa domesticus」と「豚 右前肢」と書き「アンティーク写真の作り方2」でご紹介した、古びた紙を作る方法を使ってラベルを作りました。完成でーす! うひょー、自分で作っておいてなんですが、格好良すぎて見惚れます。

アンティーク写真の作り方(2)・コーヒーウェザリングで古写真を
家庭用のプリンタ、コーヒー、オーブンを使って手軽に作る昔風写真の方法をご紹介しましょう。およその制作時間は1時間もあれば十分です。時間もお金もそれほどかかりません。

完成! 豚足の骨格標本

豚足の骨格標本
ところでブタの指は何本でしょう? 正解は4本。人差し指、中指、薬指、小指です。中指と薬指にあたる第3指と第4指が太いですね。これは主蹄(しゅてい)といいます。動物は速く走る動物ほど特殊化が進み指の数が少なくなります。例えば走ることに特化したウマは第3指(中指)しかありません。つまり中指だけのつま先立ちで走っているんですね。指の中で最もなくなりやすいのが親指(第1指)だということが豚足の標本から分かります。

豚の足の仕組み

また小さめの人差し指(第2指)、小指(第5指)は副蹄(ふくてい)と言われますが、なんのためにあるかわかりますか? これは地面についたりつかなかったりという指なのですが、後ろにさがるのを防いだり、ストッパーのようにブレーキに使うための指です。ウマは一本指の奇蹄目、ブタは偶数本の偶蹄目って理科の時間にやりましたよね。でも実は有蹄類全体の90%が偶蹄目なんですよ。ブタの仲間はいっぱいいるんですね。

夏休みの自由研究にお薦め

豚足の骨格標本
あまりに標本作りが面白いので、調子に乗って豚足標本を4つも作っちゃいました。豚足って美味しいのね。それにお医者さんが「バラバラ殺人にはのこぎりなど必要ない、メスさえあれば十分」と言うのもよく理解できました。関節にメスをいれたら簡単にバラバラになるもん。夏休みの自由研究に超お薦めです。

注意事項

薬品、ドリル、メス、カッターなどの取り扱いにはくれぐれもご注意を。私もメスで左指をざっくりやりました。それと私は生物学者でもなく単なる素人なのでヘンテコなことやってるかもしれません。ミスなどありましたらご指摘下さると嬉しいです。

追記

『標本学』という本で調べたところ、正式な学術標本の標本ラベルの記載事項が分かりました。最低限の記述は、採集月日、採集地、性別、標本番号、採集者氏名、年齢(成獣、幼獣など)、学名、和名だそうです。ラベルを作り直して入れ替えておきました。(07/17)

追記2

骨格標本
読者のクロクロさんから「標本を作ってみました!」とのメールを頂きました。

夏休みも後2日、今年の自由研究は麻理様のおかげで無事完成\(^▽^)/ ばらばらになった骨をみたときにはホントに完成するの? と不安でしたがジグソーパズルのようにピタッとはまったときひとつひとつのパーツがびっくりするほど美しいことに感動しました

クロクロさんからの手紙

とのこと。いやー、私も嬉しいです。実際に手を動かしてモノ作りをしてくださることこそ私の喜びです。手羽先とトンソクの両方の写真をご覧あれ! 素晴らしい出来映えですね。(08/31)

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材料・道具
蒸気夫人
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