真鍮エッチングで作るオリジナルバッヂ「昭和レトロ自転車改造記【4】」

昭和レトロ自転車で最も目を惹くのはバッヂではないでしょうか。昔のアンティーク自転車全体にはバッヂがこれでもかとつけられています。オリジナル自転車バッヂ作りのハウツーです。
自転車バッヂ(バッジ)

今は見かけなくなった自転車バッヂ

前面部のバッジはヘッドバッヂ・ヘッドマーク・エンブレム・ヘッドプレートなどと呼ばれています。

(財)自転車文化センターの『資料で語る日本の自転車史』によると、このような自転車の商標が書かれたバッヂは大正時代から昭和30年代まで、七宝(銅などの地金にガラス質のエナメルを焼き付けたもの)製のものが多かったようです。

しかし自転車が低価格化するに従って金属製のバッヂが印刷されたシールに代わり、やがてバッヂそのものも姿を消してしまいました。でも海外の高級自転車にはまだついているものもありますね。

シールよりも金属バッヂ

自転車バッヂ(バッジ)
これは愛知県のトヨタ博物館で撮影した昭和レトロ自転車です。カラフルなバッヂがついています。これらは金属製でなく紙のシールです。
今回手作りするにあたってカラープリントのシールにしようかなとも考えました。でも紙のシールは独特の光沢のある金属バッヂと比べるとどうも見劣りします。ということで真鍮で作ることにしました。

【超重要!】必ず読んでください!

切実なお願いです。当ブログでは「失敗してもいいから一緒にやろうよ!」のスタンスを取っています。しかし今回に限っては安易な気持ちで作らないよう強くご注意申し上げます。理由は2つ。

一つは、この方法はインクジェット用紙をレーザープリンターで印刷するという荒業を用います。電子工作や鉄道模型などの真鍮のエッチングパーツ作りでは良く知られた方法ではあるもののプリンター故障の原因になることもあり、メーカーも注意を呼びかけています。そのリスクを踏まえた上でお願いいたします。

もう一つは使用する薬品の取り扱いがやっかいなことです。今回使う薬品は身分証明書なしに購入できますが、使用後の溶液の処理はかなり大変です。考えなしに捨てたりすると大変な事態に陥ることがあります。

以上3パラグラフでさえ読み飛ばした方は絶対にやらないようお願いします。

【1】バッヂのデザインをする

自転車バッヂ(バッジ)
最初にデザインをします。ヴィクトリア朝は曲線を多様したアール・ヌーヴォーが似合いますが、昭和レトロなので直線中心のアール・デコにしました。白と黒の2階調で(切り絵のような感じで)描きますが、バッヂは色付けをしますのでカラー版も一緒に作っておきます。文字は鏡像になるよう反転しておきます。

【2】アイロンでトナー転写

自転車バッヂ(バッジ)FUJIFILMの「画彩(かっさい)」マット仕上げにプリントし、真鍮板にアイロン転写します。今回は真鍮板は0.5mmを使いましたが、お好みの厚さの真鍮板でどうぞ。アイロン転写の詳しいやり方は以下の記事を参考にしてください。

スタンピングリーフの仕組みと使い方・金色の薔薇模様を入れてみた
キラキラした箔押しを入れたい時に活躍するのがスタンピングリーフです。スタンピングリーフを使ってバインダーに金色の模様をを入れました。仕組みと使い方のハウツーを解説します。

【3】マジックで修正と裏側マスキング

自転車バッヂ(バッジ)
ピカピカの金と黒のコントラストが美しいですね。ところどころ圧着が不完全で抜けが出てしまうこともあります。その場合は、油性のマジックで欠けてしまった所を塗りつぶします。また真鍮板の裏側は腐食されないように、マスキングテープを全面に貼りつけておきます。

【4】エッチング(金属腐食)作業

自転車バッヂ(バッジ)
エッチング液(金属腐食液:塩化第二鉄溶液)を用意します。40度ぐらいのお湯で説明書きの通りの分量で薄めます。お湯を使うと反応が早く進むからです。真鍮板をジップロックに入れ、適温の腐食液を注ぎ込みます。同じく40度前後のお湯をシンクにはってジップロックを揺らしながら湯煎します。

【5】腐食できたら洗浄

自転車バッヂ(バッジ)
時々触ってみてどのくらい腐食が進んだか確かめます。片面のエッチングで0.1mmほど腐食させるのにだいたい2時間ぐらいかかりました。時間は季節やお湯の温度、真鍮板の銅の割合、エッチング液の量など様々な条件で変わってくるので、あくまで手で触った感覚で頃合いを見計らいます。調度良い腐食具合になったら真鍮板をジップロックから出して洗浄します。

使用したエッチング液はうかつに捨てないこと

自転車バッヂ(バッジ)
この時に使用したエッチング液、そして洗浄に使った水は、決してシンクなどの流しに捨てないこと。庭や川に捨てるというのもだめです。理由はエッチング液が金属を腐食させるので流しや水道管などを破損する可能性があることと、塩化第二鉄に真鍮の銅が反応して生成された塩化銅が有毒だからです。

廃液を安易に捨てるのは違法。塩化銅の毒については学校で田中正造と足尾銅山鉱毒事件について学んだ人も多いだろう。エッチング液に廃液処理剤が付属している場合には、説明書きに沿って中和させて処理する。地域によっては、市の清掃局や下水道局が廃液を引き受けてくれる場合もある。

【6】トナーを落とす

自転車バッヂ(バッジ)
真鍮板のトナー(黒い部分)を落とします。方法はメラミンスポンジでこすって落とすか有機溶剤薄め液で拭き取ります、写真の通りトナーに覆われていた部分は腐食せずに残り、その他の部分が凹んでいます。全体的に色がくすんでいますが、磨けば元通りの輝きが戻りますのでご安心を。

作業の途中ですがここで解説

自転車バッヂ(バッジ)
作業の途中ですがバッヂ作りの一連の作業を図解しました。

【1】イラストを印刷し、トナーをアイロン転写する
【2】トナーが乗っていない部分をエッチング液で腐食させる
【3】トナーを落としてスプレーの各色で着色する
【4】余分な部分の着色を削り落とす

【3】の作業は図では各色を塗り分けていますが、塗装スプレーを使う場合は一度に全色を塗ることができません。これから【3】と【4】の作業に移ります。

【7】プライマー処理

自転車バッヂ(バッジ)
最初に全体に色が乗りやすいようにメタルプライマーで下地処理します。十分に乾燥するまで待ちます。

【8】特定の一色を塗るためのマスキング

自転車バッヂ(バッジ)
各色を順番に塗っていくので、あらかじめ作っておいたカラー版の原稿を見ながら、最初に塗る色以外の部分をマスキングテープで覆います。

マスキングのやり方について

自転車バッヂ(バッジ)
貼り忘れがあると予定していなかった部分に色が塗られてしまいますし、逆に色が乗らなければならない部分にテープが張り付いているとまた塗り直しになります。デザインカッターなどを用いて、切り絵の要領でマスキングしていきます。

【9】ラッカースプレー吹き

自転車バッヂ(バッジ)
貼り終わったらラッカースプレーを吹きつけます。乾くまで待って、完全に乾いたら塗り終わった部分にマスキングをし、今度は別の色の部分をはがします。そしてスプレー。この作業を各色繰り返します。ラッカースプレーは100円ショップで購入しました。

【10】全て着色したらマスキングをはがす

自転車バッヂ(バッジ)
この作業は色数が増えるほど大変になります。乾燥の待ち時間もあるし、マスキングが面倒だしで苦労しました。なんとか着色終了。マスキングテープを全部はがすとこんな感じになりました。

【11】サンドペーパーをかける

自転車バッヂ(バッジ)
次は余分な部分に乗ってしまった色を、サンドペーパーで削り落とします。使用するサンドペーパーは、200番、400番、800番、1500番。番号が大きくなるほど細かいサンドペーパーになりますので、角材にサンドペーパーを巻きつけて削ります。低い番号から順にかけていきます。

【11】仕上げの処理

自転車バッヂ(バッジ)
綺麗に真鍮色が浮き上がったら金属用のはさみで切り抜き、ヤスリで縁を削ってバリを取ります。仕上げにニスを塗ってできあがりです。

バッヂ取り付け

自転車バッヂ(バッジ)
自転車の前面に両面テープでヘッドバッヂつけてみました。「黒糖號(号)」の文字もくっきり。本当は「黒」も旧字にしたかったんだけど、フォントで出力できなかったのです。でも満足。相互自転車の商標バッヂもつけました。

合計12個のバッヂ

自転車バッヂ(バッジ)
前後のフェンダ(泥除け)バッヂ、チェーンケースバッヂ、サドルバッヂ、シートチューブバッヂです。全12個もつけました。「つけすぎ!」というツッコミが入りそうですが、昔の自転車は部品ひとつひとつにバッヂがついてたそうです。それだけ職人さん、会社が自社の製品に誇りを持って、心を込めて作っていたからなんでしょうね。

ネットがあって本当に良かった

自転車バッヂ(バッジ)
今回もネットの先人の皆様のお知恵に大変助けられました。バッヂ作りができたのも、無償で情報を公開してくださった方々のおかげです。これでまた一歩昭和レトロ自転車に近づきましたよ。次回も手づくりのパーツをご紹介しますね。

蒸気夫人

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※情報修正2017年04月

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