蒸気社から発売された「家電通話(カデンツァ)」。iPhoneを接続すれば充電とともに受話器でお話できます。マホガニーの筐体には金模様が箔押しされ、真鍮パーツが輝いています。
iPhone充電ホルダーを作りました
実はこのiPhone電話機は単なるiPhone充電ホルダーです。重厚な作りに見えますが、大部分はボール紙とスチレンボード(低発泡スチロールの板材)、紙粘土でできているのです。材料的には小学生の夏休みの工作と変わりません。真鍮パーツもプラスチックに塗装を施したものなんですよ。
蒸気社(じょうきしゃ)とは何か?
蒸気社は私が考えた、架空のメーカです。「カデンツァ」とは独奏協奏曲のことで、それらしい漢字「家電通話」をあてはめてみました。和風と西洋風のミックス家電。『キテレツ大百科』のキテレツ斎さんの発明品みたいで気に入っています。
台座も赤く光る!
台座の左右にLEDを仕込んだので光らせることもできます。蒸気機関が主な動力源のスチームパンク世界においてはLEDは邪道かもしれませんが、なんとなくカッコいいというノリで作っただけなので、光るのも特に意味はありません。
【1】パーツ探し(1)
最初はパーツ探しです。これはネットオークションで落札したおもちゃのラジオ。クラシカルな電話機の形をしているので何かに使えるかもと入手しておいたのです。ラジオの機能は壊れてしまっていたので、たったの100円で落札。私の他には誰も入札者がいませんでした。
【2】パーツ探し(2)
必要なのは金属パーツと一部のプラスチックのみ。ドライバで丁寧に取り外して洗浄と乾燥を済ませておきます。
【3】パーツ探し(3)
他にも使えそうなパーツを100円ショップで手に入れます。おもちゃのクレーン車と釣りに使うプラスチックのアミカゴ、そしてiPhoneの充電器。普段から100円ショップやジャンク屋さん、おもちゃ屋さん、ホームセンターをうろついて、工作に利用できるものを頭に入れておくと良いですね。
【4】パーツ塗装
集めたパーツを塗装します。下地剤を吹いた後、メタリックな金色のラッカースプレーを吹き付けます。バラバラだったパーツが同じ色に着色されて統一感が出ました。
【5】充電土台作り
充電器の台座部分を作ります。スチレンボードと充電器を組み合わせて接着。細かい部分は紙粘土を盛って造形します。台座の両側にLED電球を仕込んで光らせるようにしました。表面をサンドペーパーでなめらかに削って、平らな部分にはボール紙を貼り付けます。
【8】パーツ固定
クレーン車から切り出した部品、トグルスイッチなどをスチロール板に紙粘土で周りを埋めて固定します。おもちゃの電話機の受話器部分に使われていた丸い金属パーツはレトロなベルのように見えますし耳側と口側で同じ形が2つありましたから、電話機の両側につけて飾りにすることにしました。
【9】木目塗装(1)
紙粘土を乾燥させている間に、木目塗装をしておきます。まずは全体を黄色のラッカーで塗装します。透明シールの印刷用紙に写真から加工した木目模様をモノクロで印刷します。それを黄色に塗られたボール紙に貼り付けると、写真のように地の色の黄色が透けた木目の紙になります。
【10】木目塗装(2)
マホガニー色のウレタンニスを吹きます。するとつやつやとした飴色の木目になります。一度乾燥させてから、3回ほど重ね塗りします。
【11】木目塗装(3)
そのままでも綺麗な光沢がありますが、上から透明ウレタンニスを吹いてみても良いでしょう。ただのボール紙がまるで本物の木の板のようになりますよ。
この木目塗装の方法は以下の記事に詳しく書きましたのでご覧ください。
【12】和紙で補強
パーツを取り付けたスチレンボードはやや強度に問題がありますので、木工用ボンドを薄めた水で和紙を表面に貼り付けていきます。和紙を貼ると強度を増すだけでなく、塗装、接着もしやすくなるのです。完全に乾いたらパーツの周りをアクリル絵の具で黒く塗ります。
【13】表面の板取り付け
木目に塗装したボール紙を表面に貼り付けます。土台は木の飾り台にしました。
【14】パーツ組立・接着
金色に塗っておいたパーツを組み立て・接着します。クレーン車から切り出したパーツは、正面にとりつけました。なんとなく蒸気ダクトみたいに見えませんか? アミカゴは台座左右にあるLEDライトの覆いに、クレーン車のタイヤ・ホイールはそのフタとして使いました。
【15】金箔押し模様
ゴテゴテと過剰な装飾はクラシカルなメカにはつきもの。レトロな図柄をデザインして、木目の時にも使った透明シールの印刷用紙にレーザープリンターでプリントします。
スタンピングリーフを上にあててアイロンをかけると、印刷部分に金箔が乗って金色の箔模様になりました。それを切り抜いてあちこちに貼り付けます。上から透明ウレタンニスを塗るとシールのふちが目立たなくなりますよ。
スタンピングリーフの使い方は以下の記事に詳細を書きましたのでご参考まで。
【16】プレート取り付け
仕上げにプレートを作ります。黒い画用紙にレーザープリンターで「蒸気社謹製電話機」と印刷。ボール紙を芯にして、切り抜いたラベルを貼り付けます。上からニスを塗って光らせます。受話器ホルダー部分に接着剤で取り付けたら完成!
数字は旧字体の大字
このようなダイヤル式電話機はあまり見かけなくなりましたね。数字はアラビア数字ではなく、大字(だいじ)、それも旧字体にしました。「壹、貮、參、肆、伍、陸、柒、捌、玖、零」です。この中で七にあたる字は、フォントがなかったのでさんずいや木、七という字を組み合わせて作りました。
電話機外観
電話機をぐるりと見た図です。向かって右側には、おもちゃの電話についていた天使のレリーフをはめ込みました。上にはプラスチック板をガラスのように取り付けています。左側にはトグルスイッチと蒸気パイプ。
赤い怪しい光
スイッチを入れると、中央のiPhoneが赤い怪しい光で照らされます。中の空間に余裕があったので、他にもいろんなギミックを仕込んでも良かったかもしれません。小さなWebカメラを組み込んだりとかね。
iPhone買うべきかな……
材料集めも含めて結構時間がかかってしまったiPhone電話機ですが、出来上がりには満足しています。でも私はiPhoneを持ってないんですよね。携帯電話自体あまり使わないので必要ないんです。これは撮影用に壊れたiPhoneを借りて設置しています。でも正常なiPhoneでちゃんと充電できましたのでご安心を。【蒸気夫人(マダムスチーム)】
追記:2015年12月30日
この電話機を元に新型機「家電通話Ⅱ(カデンツァかい)」を作りました。電気を使わないバックロードホーン式のスピーカー、充電機能付き。取り外し式の受話器での会話も可能。ネオヴィクトリアンな外観はインテリアとしてもお楽しみいただけます。
関連商品・参考文献
- おもちゃの各種パーツ
- ハトメなどの金属パーツ
- iPhone充電器
- 下地剤
- ラッカースプレー(ゴールド)
- ラッカースプレー(黄色)
- Mr.カラースプレー(黒)
- Mr.カラースプレー(オレンジ)
- 紙粘土
- ボール紙
- スチレンボード
- LED電球
- プリンター用透明シール用紙
- 画用紙
- スタンピングリーフ
- アクリル絵の具
- ウレタンニス(マホガニー)
- ウレタンニス(透明)
- 和紙
- 木工用ボンド
- 水性ニス