handmanoさんのメカを一目見れば、たちまちその魅力の虜となってしまうでしょう。頬が緩むような作品ばかり! スチームパンク工作の匠・handmanoさんにお話をうかがいました。
handmanoさんインタビュー
スチームパンク関係のイベントに積極的に参加されているhandmanoさん。気さくで明るいお人柄なので、作品だけでなくhandmanoさんご自身のファンになってしまう方も多いようです。でもあまりに作品がすごすぎて話しかけるのに勇気がいる──なんて方もいらっしゃるかも。今回はそんなシャイな方、また遠方にお住まいでhandmanoさんと直接お話される機会がないという方のためにもインタビューを申し込むことにしました。
最初にお名前とその由来をお教えください
はいhandmanoと申します。皆さんからハンドマノさん、最近ではマノさんと呼んで頂いています。今ではすっかり自分の名前となったhandmanoですが、そもそもはハンドルネームとしてつけたものではなく、その昔ブログ開設をする際のアカウントでした。
子供の頃からものづくりや演奏など”手の能力”に強いリスペクトがあるもので、その理想を目指すイメージでhandman(ハンドマン)と綴り、本名である大石のイニシャル「o」を繋げてハンドマン・オー「handmano」という文字列が生まれました。
よく、handは英語で「手」、manoもラテン語で「手」、そういうことですよね♪ と言って頂くことがあり、この「手手」と並んだ偶然は僕には嬉しいことではありましたが、本来は「hand-mano」ではなく「handman-o」なんです。その後ただの記号であったhandmanoが、ある日「ハンドマノさんは〜」と話し掛けられるようになり、その時初めて、あ、僕って「ハンドマノさん」なんだ…名前なんだ…と認識しました(笑)
読者の皆さんに簡単な自己紹介をお願い致します。
本分は演奏家なのですが、こちらのブログでご紹介頂く僕の姿は「ガジェット・エンジニア handmano」ですね。仰々しい肩書きを付けてみていますが、スチームパンク工作を楽しむただの愛好家です。最近ではありがたいことに出展のお声掛けを頂くことも増え、イベントでの物販参加をすることもあります。
本職は演奏家でパーカッショニスト(打楽器奏者)です。ステージでの演奏やレコーディングなどが主な仕事になります。自身の楽器を改造・制作したりすることもあります。
余談ですが、音楽も工作も、頭の中にだけあるイメージを実際に具現化するという作業で、僕には同じ感覚のものと言えます。そしてイメージ通りの形にするためには知識や技術、努力が必要になりますし、思い描いた通りに仕上がる時の快感も似ています♪
スチームパンクファンにはおなじみの東京発明者協会さん主催のイベント、スチームガーデンやデウスエクスムジカ、ハンターズフェアなどでも演奏の機会を頂くことが続いているので、それらの場で僕の演奏姿を目にして頂いた方もいるかもしれませんね。
スチームパンクの他にご趣味、現在はまっているものはありますか?
基本的に工作が趣味なので、スチームパンクに限らずの他の工作などでしょうか。木工が好きですが、最近ではレザークラフトにちょっとはまっています。
自由な創造をする素材として昔から興味がありつつなかなか手を出せずにいたのですが、昨年からついに始めました。少しずつ思ったように作れるようになってきて楽しくなってきているところです。またレザーアイテムはスチームパンクにも活かせるので両得です♪
ご家族やご友人のスチームパンク趣味に対する反応はいかがですか?
田舎を離れて東京で活動をしているもので、実家にいる家族は所謂「マノさん」のことを知りません(笑)。別に隠しているワケではなく、以前本の記事を書かせて頂いたり(マイナビ出版「スチームパンカーズJAPAN完全装備読本」)、取材(週刊アスキー「中の人」)を受けたりした時のことなども話したのですが、結局のところあまりピンときていないようです。家族を含め僕の工作好きを昔から知っている友人たちは、相変わらず何か作っている、というだけですね(笑)
今までの作品の中で一番のお気に入りは? またお気に入りとなっている理由を教えてください
強いてあげるとすれば「ハンドキャノン」ですね。2014年のスチームガーデン7(ペルシャの海賊)への参加に向けて制作したものです。同じくSG7に向けて麻理さんもライフルを制作されていましたが、あの超エレガントなライフルに対抗するには?という発想から「パワフルなのを作ろう!」とあれが生まれました。言うなれば麻理さんとの最初のご縁でもあり想い出の一品です。
そして、当時ツイッターでも多くの反応を頂き、SG会場でも「ツイッターで見ました」「本物だ!」とたくさんの声を掛けて頂きました。ハンドキャノンが会話や交流のきっかけとなり、これのおかげで「あの人」だと印象強く覚えて頂けたようなものと感じています。
その作品の着想のヒントとなったものは? また普段アイデアの源になっているものがありましたらお教えください。
具体的なヒントがあったワケではないのですが、一番イメージに近いのはジブリの「天空の城ラピュタ」に登場するドーラ一家のランチャーですね。
無骨なスチームパンクガンを作りたかったワケですが、そもそも殺傷能力を強く感じるようなものは基本的に避けたい気持ちがあり、用途的には主に障害物を破壊したりというように、武器というよりは人力以上の効率を出すための”道具”という呼び方でのイメージを大切にしています。その考えに沿って自分なりにデザインを考えています。
例えば僕のハンドキャノンを見て、対人用 (殺傷)だ、とはあまり感じずにいてもらえたら、もしくは武器だと思っても「ドカーン!うわー!(黒コゲ★) とほほ…」くらいにユーモアの範疇に収まっていて欲しいなと、そんな風に思っています。
アイデアの源は…自分に可能なことを考えることでしょうか。使える予算とか持っている技術とか。非現実な理想ばかりを膨らませるのではなく、出来ることを考えると具体的なアイデアに辿り着くように思います。
モノ作りを開始されたのはいつごろ? その当時のエピソードをお聞かせください。
工作は小さい頃から好きでした。一番古い記憶では、家にあった一冊の折り紙の本のことですね。子供心にただの四角い紙が何にでもなってしまうことが楽しく、その本に載っている難しいやつを全部マスターし、幼稚園でタツノオトシゴを折って先生たちからも喝采を浴びた朧げな記憶があります(笑)。その後順調に模型少年になり、10代の模型趣味時代で培ったノウハウが現在の僕の工作技術のベースになっていると思います。
工作をする上でとっておきのひみつ道具は? 「このツールが便利!」というアドバイスもぜひ!
僕が多用するのは小型の差し金ですね。15cmくらいのものです。金属なのでカッターも引けますし、もちろん直角出しは工作では頻繁なので重宝します。ですが、木工などに使う所謂定番サイズのものは小物制作には取り回しが悪く使いづらいので、「小型の」というところがミソですね。ひみつ道具というほどではありませんがオススメです。
現在制作中、構想中の作品はありますか?
ちょう~ど最新作がまさに出来たてホヤホヤです☆ ここしばらくは12/11(日)に埼玉県川越市で行われる狐宵祭に向けて新型狐面制作の真っ最中でした。各地からたくさんの狐が集まる不思議なお祭りで、2年前の最初の狐宵祭の時に初代の機械狐を制作したのですが、今回のはそれの焼き直しで二代目になります。今の自分らしく出来上がったかなと満足しています。
構想中のものは…たくさんあります(笑)。作りたいものがあり過ぎてどれから手をつけようかというところなのですが、準備の整ったものから順番に形にしてゆきたいと思います。大きいのとか作りたいですね。
スチームパンクをお好きになったのはいつごろですか? またそのきっかけは?
子供の頃からもともと好きだった機械の雰囲気や空想科学の世界が、スチームパンクと呼ばれると後から知った、のパターンですね。父の仕事や趣味などの関係で子供の頃から機械が身近でした。家にも山ほど工具がありますし、実際それらは僕のおもちゃでもありました。
僕の工作趣味は父の影響と言えます。何でも作るし直すしという父でしたので、物に対してはそれが当たり前の感覚でいましたし、今でも僕はそうです。DIYという言葉も大人になってから知った言葉ですが、我が家は最初からそうだった、という感じですね(笑)。のちにそれはスチームパンクのDIY精神にも繋がってゆきます。
所謂スチームパンク的なことをハッキリ表立ってするようになったのは3年程前です。Natsukoさんに会ったのもその頃ですね。愛好家として表現活動をしている人達が少なからずいる!と知り、ならば僕も表に出してもっと多くの仲間と出会おう、と思ったことが大きな転機となりました。そこから意識的にスチームパンク作品を作るということを始めるようになりました。
handmanoさんのスチームパンクの定義は何でしょうか?
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外せないのは「機械」ですね。この最も身近な無機物に息吹を感じることが僕にはとても大切な感覚です。人類の転機とも言える19世紀初頭、蒸気機関というかつて無かった大きな動力や数々の発明品が猛スピードで世の中を変えてゆきます。そこにあるのは「科学知識」とその種を様々な形にしてゆく「手(技術)」、どちらも現実の人間の中にあるもので、それ故にリアルに理解することが出来ます。
このリアルな感覚から離れずそれを感じたまま飛び込むのがスチームパンクの世界、ファンタジーなどのような突拍子もない空想ではなく、現実の延長線上や限りなく近くにある空想物語、ギリギリ近いところにある世界、ですね。
スチームパンクな作品でお勧めがありましたらご紹介ください。
あと、スチームパンクな作品というワケではないのですが、ユニークな発明品や機械がたくさん登場する点で『タイムボカン・シリーズ』がとても楽しめるのではと思います。天才科学者による奇抜なメカの数々やタイムマシンの登場など、通ずるものがたくさんあります。全体的にユーモアに溢れているのも好ましい魅力のひとつです。
今後どのような活動を予定されていますか?
年明けからいくつか出展が決まっていますので、控えているそれらをしっかり乗り越えたい…と今はそれだけで頭がいっぱいです(笑)。まずは来年2/11(土)に開催されます『スチームパンクマーケット3』ですね!
拡散希望
2月11日にスチームパンクマーケット3が開催されます!
豪華出展者が集まりお宝が集結するマーケット、是非遊びにきてくださいませ
情報は随時更新していきます(^ν^)
要チェックです!#スチームパンクマーケット pic.twitter.com/csm3sKyGqp
— Kemuri装飾店 (@aki_akinz) 2016年11月28日
初回から参加を続けさせて頂いている物販イベントですが、回を重ねるごとに規模が大きくなり今回も新たな会場にて開催が決定しました。製品を通じてたくさんの方とのコミュニケーションやスチームパンク談義を楽しめたらなと思います。どんなものを作ろうかまた悩ましい日々が続きますが、皆さまのご来場をお待ちしております。(出展に関する告知や詳細はTwitterなどで行います)
最後に読者のみなさんへメッセージを
長々とお付き合い頂きありがとうございました。こんなに長いインタビューを最後まで読めた皆さんは好奇心や根気がある方だと思いますのできっと工作に向いていると思います(笑) 是非今すぐ材料と道具を手にとってください☆
現実の世界こそそうですが、思い描いたものを具現化することで我々は身の回りを便利で豊かで楽しく変えてゆくことを重ねています。空想の世界を楽しむスチームパンクもその空想を頭の中から外へ出してこそ仲間たちとのコミュニケーションも生まれますので、表現には様々な方法がありますが是非ともお互いの空想の世界を披露し合い、物語を共に楽しみましょう。
最後に蒸気夫人こと管理人の麻理さん、この度は光栄なお声掛けと貴重な機会をくださりありがとうございました。
インタビューを終えて
ツイッターでやりとりさせていただいたり、イベントで何度もお目にかかっているhandmanoさんですが、工作に対する思い入れや子供の時のエピソードなどを新たに知ることができました。いつも新しいことに挑戦されている姿勢を拝見すると、同じ工作をする者として大変刺激になりますし、私も頑張るぞ!と勇気が湧いてくる気がします。次はどんな新作で驚かせていただけるのかワクワクしていますよ。handmanoさん、ありがとうございました!【蒸気夫人(マダムスチーム)】
関連商品・参考文献
- handmanoさん(@handmano)