男性スチームパンカーはいったいどんな服装をしたら良いのか? フロックコートに、トップハットも確かにカッコいい。でも日本人なら誰でも決まる格好があるのです。それは着物です。
ヴィクトリアンファッションも素敵だけど
スチームパンクと言えば英国・ヴィクトリア朝のファッションをアレンジした服装が一般的ですよね。女性ならレースやフリルいっぱいのドレス、コルセット。男性なら燕尾服にステッキなど。日本のスチームパンク時代である明治・大正には洋装もありますが、私は日本独自のスチームパンクとして着物も良いのではと考えています。
最近は浴衣男性も増えてきた
男性で着物を持っているという方は女性に比べればずっと少ないでしょうね。でも最近は夏祭りに行くと結構な数の男性が浴衣姿なのに気づきます。昔は女性は浴衣、男性はTシャツにジーパンのカップルが多かったのですが、最近は男女ともに浴衣というパターンも増えました。
インバネスはスチームパンク的
スチームパンクに良く似合うのは、和洋折衷な着物です。たとえばインバネス・コート。インバネスは着物の上に着るコートです。別名トンビとも言って、シャーロック・ホームズのトレードマークでもあります(実際にはホームズの服はインバネスよりフロックコートが多かったのですが)。インバネスは明治に伝わって、大正・昭和初期に流行しました。
スチームパンクガジェットをコーディネート
この写真ではベーシックな冬の和装姿ですが、これにスチームパンクゴーグル、皮の手袋、ブーツなどをコーディネートするとかなりスチームパンキッシュに決まります。コートをひるがえしてスチームパンク銃を取り出したりする仕草も似合うんじゃないかしら。明治・大正の帝都を舞台にしたスチームパンク物語には欠かせないファッション、それがインバネスです。
ベーシックな着物1
これは着物のアンサンブル。アンサンブルとは「一緒に」と言った意味で、着物と羽織が同じ生地でできているひとそろいの和服のことです。ダークグレーの紬に、赤い縞の半襟、献上の角帯、珊瑚玉の羽織紐、紅色の足袋を合わせています。赤の色がビビットに効いている組み合わせです。
ベーシックな着物2
紺の紬のアンサンブル。辛子色の半襟、角帯、足袋に、タイガーアイの羽織紐。羽織紐は私が手作りしました。シトリンや水晶も使っています。黄色が紺の字の着物によく映えます。
旦那様の着物グッズ
私が着物好きなこともあって、旦那様もたまに着物に袖を通します。でも持っている着物はグレーと紺の着物と、浴衣、インバネスだけ。でも結構な数の着物持ちに見えるのは、帯や半襟、足袋などの和装グッズを様々に組み合わせて工夫しているからなのです。
足袋について
男性の足袋(たび)というと、正式な白か黒、紺が一般的でしょうか。でもそんな常識に縛られることはありません。今は色とりどりの足袋がありますし、靴下のような素材で指が二股に分かれているタビックスは100円ショップでも手に入ります。
色で遊ぶ足袋
和装では草履や下駄を履くことが多いので(ブーツも有りですが)、足元の足袋が目立つんですよ。だからこそ派手な色で遊んでみることをお勧めします。よく足袋はシワが寄らないようにパッツパツのサイズを履くべきと言われますが、最近は伸びる素材の足袋もあるからそれほど窮屈に感じません。
帯について
男性の帯は角帯(かくおび)と兵児帯(へこおび)の2種類があります。結びやすさで言えば断然兵児帯。チョウチョ結びにすれば良いだけですからね。でもぜひ角帯にも挑戦してほしい。女性の帯結びに比べればはるかに簡単に覚えられます。でもどうしても無理という方のために、あらかじめ結んだ形で売られている簡易帯もありますよ。
半襟について
そして最も大事な半襟(はんえり)。顔のすぐ下にあるものですから足袋や帯よりも断然目立ちます。これも足袋と同じく正装の白の他黒、紺が多いのですが、若い男性にはカラフルな色に挑戦していただきたいもの。これは私が手芸の余り布で作った手作りの半襟です。
オリジナルのマジックテープ半襟
この半襟、独自の工夫がしてあるのです。それはマジックテープ。男性(に限らないかな?)が着物を着る時に一番ネックとなるのが「縫い物」です。半襟は毎回襦袢(じゅばん)に縫い付ける必要があるのですが、これが面倒で着物を着るのが嫌になるという男性が多いみたい。中には奥さんや彼女に丸投げって人もいらっしゃるようで。
ワンタッチで襟付け完了
旦那様一人でも気楽に着物を着られる方法がないものかと工夫した結果、襦袢にマジックテープの雌をつけ、半襟にその雄をつけてみました。これならワンタッチで気楽にコーディネートできるし、汗を吸ったり汚れたりしたらぱっと外して洗濯できます。ちなみに襦袢は和装の下着です。
女性は襟を抜いて着つけるのでマジックテープ法は使えないのですが、男性の着付けではマジックテープで十分でした。着崩れたり外れてしまったりということも今まで一度もありません。
襦袢の袖も取り外せる
また襦袢(じゅばん)の袖も同じくマジックテープで取り外せるようにしました。女性の着物と違って男性の襦袢の袖は、手首の部分にちらっと見えるだけです。でも私は個人的に男性の着物の袖の色がかなり気になります。凝った襦袢だと「むむっ、できる!」と舌を巻いたりします。
元の襦袢
市販の2部式襦袢から襟と袖を取り、洗濯が楽なように2部式にしています。後ろには腰紐(こしひも)が縫つけ、着付けが楽なように改造しました。
半襟の付け方
こんなふうにマジックテープに半襟をくっつけます。半襟全部にマジックテープをつけるとゴワゴワして首周りが窮屈になるのでところどころに短く切ったマジックテープを縫いつけました。
袖の付け方
これは袖の部分。これも肩の袖付け部分にぐるりとマジックテープをつけるのではなく、部分的に縫っています。こうすると脇から空気の出入りがあるので、涼しく感じますし蒸れません。
襟と袖の組み合わせは自由
この写真では同じ布の半襟と、袖をつけていますがバラバラにつけるのも良いかと。思い切った色の組み合わせで遊ぶのも楽しいですよ。
余り布で半襟と袖を手作り
半襟と袖の素材はコットン(綿素材)が縫いやすいと思います。面白い模様のプリント生地もたくさんあります。またベルベットや皮素材、レースなど変わった生地で作ってみてもいいですね。スチームパンキッシュに、ゴールドのハトメ、カシメで飾った半襟なんか素敵かも。
大人のスチームパンクファッションに
西洋のスチームパンクファッションはどうも派手すぎる、30代以降の年齢ではあの格好は似合わない……なんてお困りの男性スチームパンカーは着物を試してみてはいかがでしょう? 落ち着いた大人のスチームパンクファッションに着物はうってつけです。色のオシャレもぜひ楽しんでください。まずは今年の夏に浴衣にチャレンジしてみては?【蒸気夫人(マダムスチーム)】