ホームズマニアのためのコミック『シャーロッキアン!(池田邦彦)』

シャーロッキアン!(池田邦彦)
あなたはシャーロキアンですか? シャーロキアンとはシャーロック・ホームズの熱狂的なマニアのことです。『シャーロッキアン!(池田邦彦)』はシャーロキアン必読のコミックですよ。

シャーロキアンと名乗るには自信がない

私もホームズの大ファンであり、現在もホームズの住んでいたヴィクトリア時代の部屋目指して書斎を改造中なのですが、はたしてシャーロキアンかというと……自信がありません。

世界中のシャーロキアンと呼ばれるマニアの顔ぶれを見ると、私なんぞはもう端っこも端っこ、末席も末席に触っているのか、触っていないのかというレベルです。

シャーロキアンのマニアっぷりと言ったら半端ではありません。聖典(正典)と呼ばれるシリーズを何十回、何百回と読み返し研究し尽くすのはもちろん、口を開けばホームズがどうした、ワトソンがこう言ったとか──名コンビのことで頭がいっぱい。

ヌルいファンでも大丈夫

でも。私だって年齢が一桁の頃から『シャーロック・ホームズシリーズ』は親しんでいます。シャーロキアンとまではいかないけど、「ホームズ好き」ぐらいは言っても良いのではないかと。そんな私のようなヌルいホームズファンも温かく迎えてくれる素敵なマンガを見つけてしまいました。

池田邦彦氏の『シャーロッキアン!』

それが池田邦彦氏が描いた『シャーロッキアン!』です。池田邦彦氏は、『週刊モーニング』で連載していた『カレチ』という鉄道マンガも描いていますね。『シャーロッキアン!』は『漫画アクション』で連載されている、ヒューマン推理マンガです。

ストーリー

シャーロック・ホームズ好きな女子大生・原田愛理(はらだあいり)と、シャーロキアンである大学教授・車路久(くるまみちひさ)は、様々な不思議な出来事に遭遇し、問題を解決していきます。そして最愛の奥様を亡くした車教授の心の傷と、車教授に恋する愛理の葛藤も全編を通して描かれています。

『シャーロック・ホームズシリーズ』を土台に

それぞれのお話はホームズの冒険譚を読んだことがある方ならピンと来る物語ばかりです。『シャーロック・ホームズシリーズ』のモチーフや、登場人物などを上手く使って、現代風の事件に仕立てています。「ああなるほど、そう来るのか」とファンならうならされるはずです。

全く読んだことのない人でも楽しい

また昔読んだけど忘れちゃったなあという人も、ちゃんと原典の説明がありますので心配はいりません。もしくは全くホームズ物を読んだことがない人も、マンガのストーリーがしっかり作られていますので物語に浸ることができますし、読みながらホームズの豆知識がするりと頭に入りますよ。

かなりマニアックな知識も

豆知識などと書いてしまいましたが、どうしてどうして。『シャーロッキアン!』で語られるホームズやワトソンの情報はかなりマニアックなものも含まれます。

ワトソン夫人がワトソンを「ジェームズ」と呼んだのはなぜか?(ワトソンのファーストネームはジョン) ホームズは切り裂きジャック事件に関わったのか? アイリーン・アドラーのモデルとは? など、シャーロキアンの間でも話題になる定番テーマも取り上げられています。きっと著者の池田邦彦氏ご自身も、かなりのシャーロキアンなのでしょうね。

あたたかいヒューマンドラマ

でも『シャーロッキアン!』の一番の魅力は、読後感の爽やかさ、あたたかさです。『シャーロッキアン!』で語られる人の美しさ優しさは、聖典である『シャーロック・ホームズシリーズ』に流れるヒューマニズムを感じさせます。女子大生・愛理や車教授の悲しみや苦しみも、二人を成長させるための大切な試練だったのだなあと、ラストにはホッと安心することができます。

この絵柄だからこそ良い

正直言うと、絵は今風ではなく昭和風。CGを多様した現代のコミックとくらべて古臭さを感じるかもしれません。でもそれだからこそ、人情味のある優しいお話に絵柄がピッタリと合っていて、読み終わった時には池田邦彦さんの絵柄で読めて良かったと思えるはずです。

おまけページも嬉しい

また本編を読み終わった後にもお楽しみが残されています。それは最終の数ページにあるシャーロック・ホームズに関するトリビア。特に3巻末の「映画化された『シャーロック・ホームズシリーズ』の情報」は個人的にとても嬉しかったです。カバーにあるほのぼのした4コママンガも見逃せません。

小さい「ッ」をお忘れなく

ダンディな車教授と愛理ちゃんの恋物語も気になりますし、次はどのホームズ物が取り上げられるのかワクワクしています。正統派シャーロキアン、なんちゃってホームズマニア、ホームズ初心者までオススメできる一冊です。そうそう、タイトルは『シャーロキアン!』でなく『シャーロッキアン!』と小さい「ッ」が入ります。検索でお間違えなきよう。【蒸気夫人(マダムスチーム)】

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