自転車フレームに巻き付いている布はフレームカバーといいます。これもエンブレムや風切りとともに現代の自転車からは姿を消してしまいました。今回はフレームカバーのDIYです。
フレーム保護の役割と装飾目的
フレームカバーの目的はフレームを保護することです。しかし自転車が高級自動車並の値段だった時代では革やベルベットなどで作られていて、装飾的な意味合いが大きかったでしょう。
時代が下るに従って布が紙になり、シールになり──現代ではバッヂや風切りと同じく姿を消してしまいました。低コストで自転車を作るためには仕方ないですが、削減一辺倒なのも寂しいですね。
トヨタ博物館のレトロ自転車にも
この昭和レトロ自転車には制作会社の名前と自転車の名称が入ったフレームカバーがついています。布製でなく印刷された紙(シール?)をビニールコーティングしているものでした。これはこれで味がありますね。
ベルベット風のハイミロン
今回は印刷したシールではなく布でフレームカバーを造ります。材料はハイミロンという生地です。ハイミロンは吹付け加工でベルベット(※)風に作られたナイロン生地です。優雅な光沢が再現されていて、手触りもベルベットそっくりです。ふちを切りっぱなしでもほつれません。ちょっと縫いにくい布なのでその点だけマイナスですが、見た目は申し分ありません。
【1】材料をそろえる
材料はハイミロン、合皮、アイロン接着の刺繍ワッペン、ゴールドのメタリックトーションレース、ハトメ、本革紐です。裏地用の合皮は、前にレトロブックカバー作った時の余りです。
【2】布地の切断
自転車のフレームに合わせてハイミロンと合皮を切ります。バイアステープも同じハイミロンを使うことにしましたので、これも縦、横の長さ分×2センチで切ります。布を切る時には裁ちばさみよりも、ロータリーカッターがお勧めです。
【3】レースを縫いつける
ハイミロンの表にミシンでトーションレースを縫いつけます。ラメの入ったゴールドでキラキラしています。
【4】ワッペンを縫いつける
刺繍ワッペンは車輪をイメージした輪っか状のもの2つと、相互自転車の「S」「O」「G」「O」の4文字。アイロンで接着できますが、取れにくいように念のため縫いつけました。
【5】裏地つけ、ふちの処理
裏地として合皮の布を縫いつけます。ふちの処理は写真のようにバイアステープの要領で、ひも状に切ったハイミロンを巻きつけて縫います。ハイミロンは固くて手縫いのまつりがけが大変でした。
【6】ハトメ打ち
フレームに留める方法はハトメと革紐にしました。フレームカバーの端から、2センチおきぐらいにハトメを打ちます。ハトメ打ちは難しそうに見えますが、道具さえあれば簡単。
【7】ハトメ打ち終了
ハトメ打ち終了。「O」が逆さまの「Q」みたいに見えたので一瞬あせりましたが、パッケージを何度も確認したので大丈夫──な、はず。筆記体のハネが反対のような気もするんだけど……。
【8】革紐で車体に固定
丸革紐をコルセットのように通してカバーを自転車フレームに留めます。革紐は目立たない黒色にしました。
【9】完成!
完成! つやつやした光沢感ある布地に、ラメ入りのゴールドレースや刺繍が映えます。フレームカバーはなくても良いものだけれど、ついていると車体が引き締まります。色・デザインの違うものを作っておいて気分によって着せ替えするのも楽しいかもしれません。
オーバーエンジニアリングな自転車
「昭和自転車 Vintage Japanese Bicycles」様のフレームカバーに関する記事には「昭和20年代後半~30年代前半の日本製自転車が好きなのは、必要以上に作られているからです。つまり、オーバーエンジニアリングされています」と書かれています。
無駄であるがゆえに愛らしい
全く同感です。オーバーエンジニアリングは「無駄な付加価値がついているもの」と否定的なニュアンスで使われることが多いですね。でも無駄であるが故に、愛らしい、楽しい、美しい、面白いとも思うのです。
追記:2015年11月06日
長く乗っていてフレームカバーが古びてきましたので、サドルカバーとともに新しく作り直しました。全体的に昭和レトロからネオヴィクトリアンになりました。以下の記事もぜひご覧ください。【蒸気夫人(マダムスチーム)】