静かなブームとなっている理科趣味・鉱物。ヴィクトリア時代にも同じく珍しい石集めが流行しました。私もあちこちで買ったり、拾ったり、もらったりした石を、標本として飾っています。
ヴィクトリア時代の鉱物・宝石ブーム
ヴィクトリア時代には一大サイエンスブームが巻き起こりました。これは当時の博物趣味の流行が影響しています。老いも若きも一般市民が化石探しや植物探しに野山を奔走したんですね。
そんな中珍しい石集めも流行に。また同時に世界各国で金鉱山が発見されたことからゴールドラッシュが始まり、金や宝石をたくさん使った華やかなジュエリーが作られるようになりました。ヴィクトリア朝のアンティークジュエリーは今も人気がありますよね。
石マニアも種類いろいろ
現代も石に興味を持つ人が増え始めています。癒しを求めるパワーストーン派や、鉱物としての石に科学的な関心を持つ学術派、冷たく神秘的な石に夢を抱くロマン派などいろんなファンがいます。
宮沢賢治や長野まゆみ、澁澤龍彦などの文学作品で石にときめいた方もいらっしゃるかしら? または「宝石は女の子のベストフレンドよ!」というマリリン・モンローのような方もいたりして。
私の鉱物コレクション
私は買ったり、拾ったり、もらったりした石を、標本として額装して壁に飾っています。古びた標本ラベルも自作。時々クラシカルな顕微鏡で観察して楽しんでいますよ。一般に石は硬くて永久に変わらないものだと思われていますよね。でも石によっては太陽の光や湿度、温度で簡単に変化してしまうものも多いのです。
マイクロマウントのススメ
小さく砕いた石の標本をガラスやプラスチックのケースに入れて保存しやすく、観察しやすくしたものを「マイクロマウント」と言います。作り方はなんでもいいんです。薬の入っていたガラス瓶や、フィルムケース、手作りの箱でもOK。オリジナルのマイクロマウントを作るとより石が可愛くなりますよ。
私のお気に入り標本
ここで私が一番気に入っている標本をご紹介しましょう。こちらは手作りの木の飾り台にプラスチックケースを乗せた形にしています。なぜかというととっても繊細で壊れやすい鉱物だからです。砂漠の薔薇(Desert Rose / Sand Rose)とオケン石(Okenite)です。
砂漠の薔薇とは?
バラのような形をしているでしょう? 文字通り砂漠で見つかる石です。砂漠で昔オアシスだったところの水が干上がって、水に含まれていた硫酸カルシウムや硫酸バリウムの成分が結晶化したものなんです。どのようなメカニズムでバラのような形になるのかは科学的に解明されていません。本当に自然は素晴らしい芸術家ですね。
オケン石とは?
こっちはオケン石。フワフワしていて、まるで白ウサギがくるんと丸まっているみたいですね。これ、れっきとした鉱物なんですよ。細かい毛がびっしり生えているよう。これらは細いガラス状の繊維で針状結晶で成っています。あまりに鉱物からかけ離れたルックスなので、時々ケサランパサランという謎の生き物と間違われてしまうこともあります。
ミクロの世界へ行こう!
私はあくまでもミーハーな石コレクタなので、地質学的にどーのというお話はあまりできません。ただ顕微鏡を覗いてみる景色がとても好きです。ほんの小さな石なのに拡大すると、荒涼とした砂漠や黄金の宮殿、凍てついた氷の世界が広がっています。じっと覗き込んでいると、まるで私がその不思議な世界をとぼとぼと歩いているような気がしてくるのです。
この素晴らしき世界
こんな小さな石に広大な風景が閉じこめられているのだと思うと、この世界はなんて手抜かりなく美しく作られているんだろうかと畏怖の念さえ湧いてきます。きっとヴィクトリア時代の石マニアの人たちも、真鍮の顕微鏡を覗き込みながら石の旅をしたんでしょう。
石の寿命は比較的長いです。同じ石を見て同じように心弾ませる人が過去にも現在にも未来にもいるのかも──と想像するとなんだかワクワクしませんか?
パワーストーンブームに対する否定的な声
現代のパワーストーンブームは、学術派マニアにとってはウソっぽいと否定的に取られることも多いです。私自身も石が悪霊を除霊するとか、金運を招くとか、恋愛成就するなんて聞くとホントかなあ?とも思えてきます。
ポジティブな影響があるのならそれも良し
でもひんやりした石を握っていると心が落ち着いたり、綺麗な石を見て元気が出てくることもあるはずです。根拠レスなモノをなんでもかんでも信じるのは危険ですが、何らかのポジティブな影響があるならそんな思いこみも良いかもしれません。
石を見てみませんか?
校庭に落ちている小石をつまみ上げてみる小学生から、ハンマーとタガネを両手に山で鉱物採取というプロまで、石はいろんな楽しみ方があります。母上の宝石箱をこっそり開けてみるのもよし、散歩をしながら地面をキョロキョロしてみるもよし、あなたも石を観察してみませんか?【蒸気夫人(マダムスチーム)】