ラジオメータ。赤外線などの放射エネルギーを吸収させることで得られる運動──つまり光が当たると羽車が回り、暗いと動かない。なんだか生き物のようで実に愛らしいではないですか。
ラジオメータの動きを動画でどうぞ
ラジオメータ効果は赤外線などの放射エネルギーを吸収させることで得られる運動です。薄暗い室内に置いているラジオメータに、テーブルライトの強い光を当ててみます。すると止まっていた羽車がクルクルと回り始めました。電気を消すと羽車は失速しはじめやがて止まってしまいます。光が当たると羽車が回り、暗いと動かない。生き物のようで実に愛らしいではないですか。
スチームパンク映画にもたまに登場?
スチームパンク的な映画にも時々小道具として登場することがあります。こちらは『ヴァン・ヘルシング』(2004)の一場面に登場するラジオメータ。マッドサイエンスな修道僧・カールの実験シーンです。ラジオメータは特に何の役にも立っていないのですが、レトロな実験室に良く似合いますね。

ラジオメータの仕組み
羽の片方を黒く、片方を白く塗った羽車に日光など光を当てると、光の吸収が大きい黒い羽が白い羽の面よりも温度が高くなります。すると黒い面の近くの気体分子が白い羽の近くの気体分子より大きく運動するので、その力の差で羽がクルクル回るんですね。私が持っているラジオメータで言うと、黒の面が押しているので右回りになります。
光圧で回ってるわけじゃないです
「光子が羽車に当たってその反作用で回る」「光の粒子の圧力で回る」とよく誤解されているんですが間違いです。クルックスも最初間違えてたくらいですので仕方ないとは言えますが、私が中学生の時理科の先生が光子論で説明してました。もし光子によって羽車が回るなら、白い面が押されて回るはずですよね。
誤解を生みやすい実験だから要注意
確かに光が光圧(放射圧)を持っているのはマクスウェルの電磁波理論によって説明されていますが、ものすごく小さな力です。理論的には不可能ではありません(※)が、この大きさで光圧だけでで羽車を回転させる装置を作るのは技術面で難しそう。誤解を生みやすいのであんまり理科の授業でやんない方がいいと思います。
英国人科学者・ウィリアム・クルックス
ラジオメータ(Radiometer)はライトミル(Light Mill)とも呼ばれます。1875年にイギリス人科学者・ウィリアム・クルックス(William Crookes 1832~1919)によって発明されました。
クルックスの心霊研究家としての顔
クルックスはクルックス管やラジオメータなどの発明者&物理学者としての顔よりも、学研『ムー』の愛読者の間では、心霊研究家としての顔の方が有名です。空中浮揚で知られるダニエル・ホームを本物だと断言したり、霊媒師のエクトプラズムや心霊写真を撮影したり。かなりトンデモな学者さんです。
でもコナン・ドイル、アルフレッド・ウォーレス、オリバー・ロッジなどなど当時の学者、有識者はこの手の研究に興味津々だったので、クルックスだけがトンデモってわけではありません。

生きているような可愛い器具
ラジオメータは人を惹きつけてやまない魅力があります。朝起きてカーテンを開けると、ラジオメータが息を吹き返したようにクルクルと回り始めます。なんて可愛いのでしょう。これほど心癒される実験器具があるでしょうか。それを見るとホッとするというか心が和むんですよね。【蒸気夫人(マダムスチーム)】