ガラスの球体に水が入っていて、下の方からにゅっとガラス管が伸びています。理科の実験器具のようでしょう? これは晴雨計。実は世界で最も古い気圧による天気予報計なんですよ。
晴雨計とは何か?
晴雨計(Weather Glass・Storm Glass)は大気の圧力を測定する器具です。天候が変化すると気圧も変化しますよね。低気圧が近づいてくると天候が悪化して雨が降ります。この気圧の変化を測る道具として晴雨計が発明されました。
晴雨計の見方
注目部分はガラス管の中の水の位置。菅の中の水面が上がってくると低気圧が接近している──つまりお天気が悪くなるという予報。逆に水面が下がってくると天気がお天気が回復に向かうという予報になります。
晴雨計のメカニズム
気圧を測る道具と書きましたが、その気圧を発見したのはイタリアの物理学者トリチェリ(1608年~1647)です。トリチェリは「空気には重さがある」と初めて明らかにしました。彼は「それでも地球は回っている!」という言葉で有名(※)な、物理学者・ガリレオ・ガリレイのお弟子さんです。
空気に重さがあることは普段全く感じませんが、実は私たちはいつも空気にぎゅーぎゅー押されています。1気圧は1013ヘクトパスカル(hPa)。1平方センチメートルあたり約1キログラムの重さになります。これ1平方メートルなら100×100で10トンにもなる重さですよ。すごく重い! でも私たちがぺちゃんこにならないのはなぜ?
実は体内から外側に向かって同じ圧力で押し返しているから平気なんですね。この気圧のバランスが急に変わると、体内からの圧力の調節が遅れます。飛行機に乗ったとき高度が急激に変わって鼓膜に違和感を感じたりしますよね。あれも急に気圧が低くなりその圧力差を感じることで起こる現象です。
大気の圧力を測ることが出来る道具
この晴雨計の管の上の部分は穴があいているので、管の中の水面までは大気と同じ圧力になっています。一方、球体の部分には穴はなく空気が閉じこめられている状態です。デフォルトの状態では、ちょうど管の水面と球体の水面が同じぐらい。
もし低気圧が近づいてくると気圧が低くなり管の水面を押す力が弱くなるため水面が上がります。晴雨計は管の水面を押す気圧が高いか低いかを晴雨計で測ることができる道具なのです。
手で握ると水面が上昇
でもホントのところこの晴雨計、気圧の変化よりも気温の変化の方に敏感に反応してしまうのです。動画で見てみてください。手で握ると管の水面が上がっていきます。これはなぜか? 以前ラブ・メータをご紹介したときにシャルルの法則についてお話ししました。

温度が上がる→体積が増える(気体が膨張する)
温度が下がる→体積が減る(気体が収縮する)
「圧力が一定の時、気体の体積は絶対温度に比例する」っていう法則でしたよね。球体に閉じこめられた気体を温めると、その膨張によって水が押され、管の中の水面が上がってしまうんです。これでは正確な天気予想はできなさそう……。
また晴雨計は現在から数時間の天気が分かるだけで、明日、明後日の天気など長期予報はできません。あしからず。
形良ければ全て良し
でもヴィクトリア朝の理科実験室にありそうな、チャーミングな形なので気に入っているのです。この可愛らしいガラスの天気予報官をチラチラ見ながら「ありゃ、雨かー」「おっ、晴れだ」なんて一喜一憂しているのでした。
【蒸気夫人(マダムスチーム)】