歯車がカタカタ回って式を計算、デジタルで表示。蒸気社の新製品です。アナログだけど新しいディファレンス・エンジン電卓を作ってみました。その名も「炎算(Enzan)」です。
階差機関(かいさきかん:difference engine)
階差機関(ディファレンス・エンジン)は差分機関(さぶんきかん)とも呼ばれる機械式の計算機です。もとはJ・H・ミュラーが1786年にアイデアを得たものですが、1822年にチャールズ・バベッジが再発明しました。このメカメカしさ! いかにもスチームパンクでワクワクしますね。
【1】メンブレン式の電卓を選ぶ
元の素材として使ったのはこの電卓。竹でできています。なぜこれを選んだかというとキーがパンタグラフ式ではなくメンブレン式だったから。昔のキーボードを叩いているようなタッチで、レトロ感が出ると思ったんです。
【2】分解
電卓を分解します。実にシンプルな作り。こんな小さなチップで計算できるようになったんですから、デジタルの恩恵は素晴らしいですね。
【3】キートップをはずす
キーからキートップを外す作業です。実はこれがベラボーに面倒くさいのです。スチームパンクなキーボードを作ったことがある方なら大いに頷いていただけると思うのですが、この単純作業が非常に辛いのですよ。力仕事だし、失敗は許されないしで。
【4】本体をくり抜く
ガワに切れ込みを入れて繰り抜きます。竹で出来てるから固いです。ルーターを使うと時間短縮。
【5】数字の歯車を作る
円柱状のバルサ材を切って着色、金色の紙に印刷したシールと、歯車を組み合わせて、バベッジの階差機関的パーツを作ります。
【6】ゴールド塗装
下地を吹いてからゴールドのラッカースプレーで塗装。毎度のことなのでこの辺はもう慣れましたね。
【7】カシメとカッティングシート
本体に穴を開けてカシメを接着。普通はこんなにリベットで留める必要はないのですが、スチームパンクらしさの演出としてたくさんつけてみました。木目のカッティングシートも貼って金色とのコントラストをつけました。
【8】分解したパーツを元通りに組み立てる
分解したパーツを元のように組み立てます。写真右の半球状のゴムがメンブレン。このゴムの弾力で押したキーが元に戻るんですね。
【9】歯車パーツを接着
繰り抜いた筐体に歯車のパーツを接着します。そう、実はこの歯車回らないんですね。これがキリキリ回りながら計算してくれるといいのになー。
【10】キーを作る
アクセサリーパーツのカボションを使ってキーを作ります。キラキラしたゴールドがドーム状のガラスパーツに映えますね。「加減乗除」という漢字を使って日本っぽさを出してみました。
【11】キーを接着
キーにキートップを接着しました。数字も漢字。アラビア数字に比べると使いにくいような気もしますが……。でも美しいから良しとしましょう。
【12】完成!
「蒸気社謹製計算機 炎算Enzan」のシールを貼り付けて、完成! いつも私の書斎机の上でキラキラと輝いています。もちろん計算機としても重宝していますよ。ついでにテンキーも作りましたので、下の記事もご一緒にどうぞ。【蒸気夫人(マダムスチーム)】
追記:2016年09月01日
なんと、制作一年後に私の炎算のパクリ商品がAmazonで販売されていました! びっくりー!
ツイッターで教えてもらったこれ、私が2年前に作ったスチームパンク計算機にそっくりじゃない? 蒸汽朋克って書いてあるから中国。パクリ商品が出たら一人前とか言うけど中国人見る目あるなー!https://t.co/xkAlYp8rPl pic.twitter.com/fgcM33OPiv
— 五十嵐 麻理 Mari Igarashi (@IgarashiMari) 1 September 2016
追記:2016年09月22日
誰か買ったみたいです。わお、すごい。こんな値段で買ってくださる方いらっしゃるのだなー。面白い体験をしました。
関連商品・参考文献
- メンブレン式の計算機
- バルサ材(円柱)
- 歯車パーツ
- カシメ
- ガラスビーズ
- カボション皿
- 金色の紙
- 下地剤(ミッチャクロン)
- ラッカースプレー(ゴールド)
- 接着剤
- 工作道具一式