本当のお話を知っていますか? アンデルセン『人魚姫』絵本コレクション

人魚姫あらすじ
本当の『人魚姫』のお話をご存知ですか? 世界各国の『人魚姫』の絵本を、お話とともにご紹介します。どれも美しい絵本です。お子さんだけでなく大人の方へのプレゼントにもお薦めです。

かなり改変されているディズニー版『人魚姫』

デンマークの作家・アンデルセンの童話『人魚姫』は世界各国で愛されているお話で、様々な国で絵本化されています。でもあなたは本当の『人魚姫』のお話をご存知ですか? ディズニー版の『リトル・マーメイド』(1989)はかなり改変されているので、アンデルセン原作のお話はよく知らないという方もいらっしゃるかもしれませんね。

そこで各絵本とともに、アンデルセンの『人魚姫』のあらすじをご紹介していきます。

人魚姫(アンデルセン)のおはなし

人魚姫あらすじ
はるか沖の海はヤグルマギクの花びらのように青く、透き通ったガラスのように澄んでいます。その海の底には、人魚の王様のお城がありました。お城の壁はサンゴ、屋根はキラキラ光る真珠の入った貝でできていました。王様には6人の人魚姫がいました。そして亡くなったお妃様のかわりに王様のお母様であるおばあさまが人魚姫を育てていました。

人魚姫あらすじ
一番下の人魚姫は姉妹の中で最も美しく、最も美しい声を持っていました。肌はバラの花びらのように清らかで、目は深い海の底のように青いのでした。

「15歳になったら海の上に浮かび上がることを許してもらえますよ」とおばあさまは人魚姫たちにいいました。そして次の年に15歳になった一番上の人魚姫は海の上へ泳いでいきました。次の年には2番目の人魚姫が、その次の年には3番目の人魚姫が波の上に浮かび上がりました。

人魚姫あらすじ
海の上へ行った人魚姫たちは、他の人魚姫に何を見たかを話して聞かせました。月の光、街の灯、人間の子ども、クジラ、流氷……。一番幼い人魚姫は15になる日を待ち遠しく思いました。そしてとうとう待ち続けた誕生日がやってきました。

人魚姫あらすじ
人魚姫が波の上へ顔を出すと、大きな船が海に浮かんでいました。楽しげな歌や音楽が聞こえてきます。船室の窓から覗いてみると、美しい王子の姿が見えました。この日は王子の誕生日で、船上でお祝いをしていたのです。人魚姫は王子から目を離すことができませんでした。

人魚姫あらすじ
恐ろしい嵐がやってきました。山のような波が船を襲い、マストが折れ、船板が砕けました。人魚姫は海に放り出された王子を必死に探しました。王子は気を失って波にもまれていました。人魚姫は王子を抱きかかえると、嵐の海を泳ぎ続けました。

人魚姫あらすじ
夜が明けて嵐が収まりました。人魚姫は王子様を砂浜に寝かせました。すると一人の若い娘がやってきて王子を見つけました。人魚姫は岩陰に隠れながら、王子が介抱されてその娘と立ち去るのを寂しく見つめていました。

人魚姫あらすじ
人魚姫は王子様を想い続けて何度も海の上に上がっていきました。人魚姫は王子への気持ちを年上の人魚姫に打ち明けました。お姉さん人魚たちは王子の宮殿を探しだしてくれました。人魚姫は毎日のように宮殿のバルコニーの下まで泳いでいって、王子の姿を波間で見つめるのでした。

人魚姫あらすじ
「人間はおぼれなければいつまでも死なないのですか?」人魚姫はおばあさまにききました。「いいえ、300年生きられる私たちと違って、人間の一生は短いの。でも人間は私たちにない魂というものを持っていて、体が死んでしまっても人間の魂は永遠に生きられるのですよ。私たちは死んだら海の泡になって消えるのですけどね」

「私も死ぬことのない魂がほしいわ」

「もし、人間の誰かがあなたを本当に愛するならば、その人の魂があなたの心に入って魂を分けてもらえますよ。でもそんなことは決して起こらないでしょう。人間はわたしたちの魚のしっぽを、不格好だと思っていますからね」

人魚姫あらすじ
人魚姫は海の魔女に知恵を貸してもらうことにしました。魔女は人魚のしっぽを人間の足に変える薬を作ってくれるといいました。「だけどその足は歩くたびにするどいナイフを踏んだように痛むよ。それにもし王子が他の女と結婚したら、おまえは結婚式の次の朝に泡となって消えるんだよ」

魔女は言いました。「それからもう一つ。この海で一番美しいと言われているお前の声をもらうよ。薬と引き換えにね」お姫様は王子と一緒にいられるのならどんなことも我慢しますと答えました。

人魚姫あらすじ
夜が明ける前に人魚姫は王子のお城まで泳ぎ着きました。そして魔女にもらった薬を飲んだ途端に痛みで気を失ってしまいました。気が付くと目の前に王子が立っていました。人魚のしっぽは二本の足に変わっていました。

「あなたは誰? どこから来たの?」と王子様は聞きました。口がきけない人魚姫は悲しげに王子を見つめました。王子は人魚姫の手をとって宮殿へと連れて行きましたが、歩くたびに無数の針に突き刺されるような痛みが足に走りました。

人魚姫あらすじ
人魚姫は宮殿中で誰よりもきれいでした。誰よりも優雅に軽やかに踊ることができました。馬で王子と遠乗りしたり山にも登りました。足には血が噴き出るような痛みを感じましたが、王子と一緒にいられる幸せに微笑み続けました。王子は「僕の可愛い拾いっ子」と人魚姫のことを可愛がりました。

人魚姫あらすじ
王子は言いました。「君は僕の命を救ってくれた娘さんに良く似ている。船が難破して溺れた時、その人が浜辺で僕を助けてくれたんだ。僕はその人をひと目で好きになったけれど、二度と会うことはないだろう」

王子様、あなたを助けたのは本当は私なのですよ……。人魚姫は深くため息をつきながら王子様を見つめるのでした。

人魚姫あらすじ
ある時、王子は旅に出ることになりました。隣の国の王女様に会うことになったのです。「両親のいいつけで行かなければならないけど、僕はそのお姫様を好きになることはないだろう。もし結婚するとしたら、大好きな娘さんに似ている君を選ぶよ」王子様は人魚姫に言いました。王子様は人魚姫を連れて船で隣国に向かいました。

人魚姫あらすじ
ところが隣の国の王女様こそが、王子を浜辺で見つけた娘さんだったのでした。「あなただったのですね!」王子は王女様に求婚しました。船の上では結婚のお祝いが幾日も続きました。人魚姫は悲しみを込めて踊りました。人魚姫は泡となってまもなく消える運命にあるのです。

人魚姫は胸が張り裂けそうな思いがしました。けれども泣くことはできませんでした。魂のない人魚姫は涙を流すことができないのです。

人魚姫あらすじ
その夜更け、船の上で人魚姫が暗い海を見つめていると、波間からお姉さんたちが浮かんできました。姉の人魚姫たちの長くて美しかった髪はぷっつりと短く切られていました。

「私たちの髪と引き換えに、魔女にナイフをもらったわ。これで王子の心臓を突き刺して、流れる血を足にかければあなたは人魚に戻れるの。急いで、お日さまの昇るまでに、さあ、早く、王子を殺すのです!」

人魚姫あらすじ
人魚姫は王子と花嫁が休んでいる寝室に行きました。王子と花嫁は幸せそうに眠っていました。人魚姫は震える手でナイフを握りしめました。そのとき王子は夢の中で花嫁の名前を呼びました。人魚姫はナイフを海に投げ捨てました。

人魚姫あらすじ
人魚姫はもう一度だけ王子をながめると、船から身をおどらせて海へ飛び込みました。人魚姫の体は泡となって波の中に溶けていきました。

人魚姫あらすじ
あたたかい太陽が海の泡を穏やかに照らしました。人魚姫は自分の体が軽くなって空に浮かんだのを感じました。人魚姫は空気の娘となりました。300年の修業をすれば人間と同じ魂をもらうことができるのです。人魚姫は生まれて初めて涙を流すことができました。

船の上で王子と花嫁が人魚姫を探しているのが見えました。二人は海に漂う泡を悲しげに見つめていました。人魚姫は花嫁の額にキスをして、王子に微笑みかけ、そして高く高くバラ色の雲の方へと上っていきました。(おわり)【蒸気夫人(マダムスチーム)】

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