『とある魔術の禁書目録(インデックス)』は鎌池和馬氏によるライトノベル。本書をさらにリアルにすべく、禁書的装丁に改造してみました。これがホンモノの『インデックス』だっ!
本好きなのでラノベにも目を通します
私は三度の飯より本が好き。ソノラマ文庫、コバルト文庫で育ち、現在も重度の活字中毒患者ですから、電撃文庫をはじめとするライトノベルにも当然目を通しております。しかし現在のラノベは三十路女、ましてや同年代の男性が電車の中で読むには、かなりプレッシャーを感じる表紙です。
決して萌え絵が悪いというわけではありません
萌絵が悪いとは決して言っていません。私のような年齢になると世間の目も気にしなくてはならないのですよ。イラストの冒涜は決して意図していませんので、その旨どうかご理解ください。個人的にはとても可愛いと思います。
私のようなおばちゃんでも読みやすい表紙に
でも装丁クラシカルにしたら、私のようなおばちゃん、おじちゃんもナンの気兼ねもなく人前で読むことができるのではと考えました。そしてどうせなら教会が「目を通しただけで魂まで汚れる」という禁書的な装丁にしてみようじゃないかと。
ラテン語で禁書目録と書いてあります
真鍮に刻まれた「Index Librorum Prohibitorum」はラテン語で「禁書目録」の意味。「何読んでるの?」と聞かれたら「インデクス・リブロルム・プロヒビトルム──ま、禁書目録ってとこかな」と中二病的にお答えください。
以下作業工程は該当の記事参照のこと
作業工程はすでにこれまでの記事で詳しく解説していますので、割愛します──とやると書くことがなくなってしまいますね。
禁書目録については説明が必要もないぐらい売れていますし、書評もネット上にどっさりありますから、かわりに中高生時代にはまったライトノベルのことについて書きます。以下個人的なエッセイです。
【1】ScanSnap自炊
小学生・中学生の時に熱心に読んでいたソノラマ文庫は、夢枕獏先生の『キマイラ・吼』、高千穂遙先生の『クラッシャージョウ』、清水義範先生の『幻想探偵社』、菊地秀行先生の『バンパイアハンターD』などなど──。
今でも人気の大御所がティーン向けに名作の数々を書いていたんですよ。SF、ファンタジーが多かったですね。大人のお兄さん、お姉さんの世界に憧れて、一生懸命背伸びして読んでいました。
【2】丸み出し
中でも最も好きだったのが、菊地秀行先生の『エイリアンシリーズ』。主人公は男子高校生・八頭 大(やがしらだい)。愛称は大ちゃん。トレジャーハンターの家系に生まれ、総資産は9000兆円。高校生ながら世界屈指のトレジャーハンターとして名を馳せています。
伝説のトレジャーハンターの孫にして、スーパーセクシーボディの持ち主・太宰ゆきを相棒に、血沸き肉踊るお宝探しの冒険を繰り広げます。もちろん菊地秀行先生ですから、ティーン向けにもかかわらずセックス&バイオレンス炸裂です。ドキドキしながら夢中になって読みました。
【3】切れ込み入れ
主人公の八頭 大がそりゃあもうカッコイイ。いかなる困難な状況でも最後まで諦めず、最先端の武器(007シリーズのようなスーパーガジェット)を片手に、バッタバッタと敵をなぎ倒す。鍛え上げた肉体と、天才的な頭脳で世にも稀なる秘宝を手に入れます。
当時の表紙・イラストを天野喜孝先生が描かれてまして、三白眼ぎみのクールな目と引き締まったワイルドな顎は、長年私の理想の男性のルックスでした。
【4】背固め
大ちゃんより年上の大学生になっても、私はエイリアンシリーズを読み続けていました。上京したときには、真っ先に彼の住む六本木に行き、「ひゃあ、こんなカッコイイ街に住んでんだー、大ちゃんすんごいなー、お金持ちなんだなー」と聖地巡礼までしました。
【5】小口マーブリング
私の夢の一つ「蔵書の全てをデジタル化した電子図書館」は、エイリアンシリーズを読んだことに端を発しています。八頭大は六本木の自宅に「図書室」を持っているのですが、そこには本が一冊もないのです。この世の全ての本をデジタル化しどんな事でもコンピュータがたちどころに文献をひっぱってきて教えてくれるという、最先端の図書館なんですよ!
【6】見返しマーブリング
「それがどうしたの? 普通じゃん」というあなたへ。『エイリアンシリーズ』はインターネットが世界中に張り巡らされ、Googleがあらゆる情報を収集し、iPadやKindleなどの電子書籍の普及とScanSnapと低価格HDDによって書籍のデジタル化が可能になった、現代の話じゃないですよ!
シリーズ第一巻の『エイリアン秘宝街』が出版されたのは1983年。今から30年以上前です。私が読んでいた時代でも20年前。私はこの時代を先駆けた発想に大きな衝撃を受け、ずっとずっと大ちゃんのような電子図書館を持ちたいと願ってきました。
【7】見返し接着
ライトノベルは中高生をターゲットとしていて、値段も安く、イラストにアニメ調の萌え絵が使われているからか、大人の読書家の間では軽視されているようです。「ラノベなんか読んでるの? いいかげん卒業したら?(苦笑)」と。
卒業する必要なんか全然ありません。電撃文庫も、ファンタジア文庫も、スニーカー文庫も、心踊る、面白い作品はたくさんありますよ。そういうあなたはラノベ読んだことがあるんですか? ただの食わず嫌いでは?
【8】表紙作り
『禁書目録』もワクワクしましたよ。中学生の時に手にとっていたらもっと私はハマってしまうだろうな。もちろん賛否両論あるのは知っています。でも読者を飽きさせないサービス精神を感じるし、エンターテイメント作品として大成功していると思います。もし駄作なら、アニメ化、ゲーム化もされないし、この出版業界不振の中1000万部も売れないでしょう。
【9】背表紙スタンピングリーフ
ただ最近のラノベ作品全般を読んで、ちょっとだけ気になることはあります。それは「ごく普通の平凡な男子主人公のもとに、突然エキセントリックで活発な美少女のヒロイン(時に複数)が現れ、主人公を冒険や戦いに巻き込んでいく」というストーリーが多いように思うんです。
【10】表紙・角処理
昔は良かった──という気はないのですが、私が中高生の頃のラノベの男子主人公たちはもっとガツガツしていて、冒険や恋愛に積極的。自分の力で何かをつかみとろうとする人が多かったのです。たとえヒロインが悪女的な強いキャラクタでもあくまでも主役は男の子。平凡な男子が女子の力で変わっていく展開とは真逆のストーリーが多かったような……。
【11】本文・表紙接着・溝出し
これも時代の流れなんですかね。今は草食系男子ばかりで、大ちゃんのようなワイルドな肉食系男子は流行らないのかな。まあどちらが良い悪いではなくお話が面白ければ文句はありません。個人的には、私を冒険の旅につれだしてくれそうな、八頭大的肉体派のマッチョ男子が好みではありますけどね。
【12】真鍮プレートデザイン
とはいえ。私が結婚したのは肉食系には程遠い、おっとりした草食系男子なのだから人生分からないものです。でも八頭大のように奇妙奇天烈な珍スポット、ロマン溢れる不思議な遺跡を世界各国めぐるのが私の別の夢でもあります。日本各地の遺跡をめぐる冒険は現在行っていますので、世界編はいつかきっと実現させたいと思っています。
【13】真鍮エッチング
だから今現在ライトノベルが大好きという中高生のあなた。「こんな風に生きてみたい」という憧れの主人公がいるのなら、いつか彼・彼女のようになれるよう毎日を生きましょう!
あなたのことをバカにする人がいるかもしれませんね。私もクラスメートだけでなく学校の先生にも「頭がおかしい」と言われていました。でも当時私が夢見ていたものを、今はほぼ全て手に入れることができました。ほうらね、先生、ちゃんと実現したでしょう?
【14】真鍮墨入れ
30年前なら「電子図書館なんて大金持ちでもなければ個人で持てるわけない」と笑われるようなことだったかもしれません。でも今現在、たった数万円の出費で八頭大と同じ規模の電子図書館を所有することができるようになったのです。あなたの夢も実現する日がやってくるかもしれませんよ。
【15】完成
ライトノベルを卒業する必要は全くありませんが、本の世界に興味を持ったならそこからつながる本をぜひ手にとってみてくださいな。私も『エイリアン』シリーズに登場した、オーパーツや遺跡がきっかけとなって日本国中旅しています。
『とある魔術の禁書目録』を読んで、ラテン語に興味が湧いたり、キリスト教世界について学んでみたくなったり、いつかバチカン図書館を訪れるという夢を持つのも良いですね。あなたの夢が叶いますように。【蒸気夫人(マダムスチーム)】