心霊研究家コナン・ドイルが巻き込まれたコティングリー妖精事件とは?

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コナン・ドイルは『ホームズ』シリーズで知られていますが、オカルトマニアとしても有名です。心霊研究家としてのドイルが巻き込まれた妖精事件とはいったい何だったのでしょうか?

エルシーとフランシスの妖精写真

1920年、二人の少女が妖精の姿をカメラに納めたというニュースで大論争が巻き起こりました。彼女たちの名はエルシー・ライト(16歳)と彼女のいとこのフランシス・グリフィス(9歳)。1917年から1920年にかけてエルシーが父親から借りたミッジカメラで撮影した写真には、舞い踊る妖精、二人と楽しそうに遊ぶ妖精の姿が映っていました。

イギリス全土を巻き込む事件

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これがイギリス全土を巻き込む「コティングリー妖精事件」となったのは、当時から著名人だったコナン・ドイル(Sir Arthur Conan Doyle:1859〜1930年)が関わったからです。

コナン・ドイルの『失われた世界』とヴィクトリア時代の恐竜ブーム
シャーロック・ホームズシリーズで有名なアーサー・コナン・ドイルのSF小説『失われた世界』と恐竜についてのコラムです。ヴィクトリア朝の恐竜ブームとは何だったのでしょうか?

彼は専門家とともに妖精写真を調べあげ、トリックの可能性はないとして雑誌に発表しました。新聞・雑誌などのメディアが注目し、田舎町コティングリーに記者や観光客が押し寄せる騒ぎとなりました。

エルシーの偽造告白

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コティングリー妖精事件は1930年にドイルが死去すると人々の記憶から忘れられていきました。しかしまた数十年後に世界中を驚かせることになります。1966年の『デイリーエクスプレス』誌に、エルシーが偽造写真であることを告白したのです。

「あの写真は、私とフランシスの想像の産物です」
「妖精写真はエルシーが妖精の絵を描き、それを切り抜いてピンで止め、写真に撮ったものでした」

『妖精の出現』

一連の妖精写真は「最も多くの人々を最も長い間だましたトリック写真」としてギネスブックに載ることになりました。これがコティングリー妖精事件のあらましです。

妖精とは何か?

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妖精とはヨーロッパの伝説に登場する自然の精霊のことです。キリスト教においては天使の一種であるともされます。一般にはディズニーのティンカーベル──美しく小さな女性型で羽が生えているイメージでしょうね。

日本で言えば妖怪のようなもの

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でも善良な心を持つ者からいたずら好き、人間に害をなすものまで様々。ほとんどのものは人間の形をしていますが、動物・昆虫の形をしていたり、姿が定まっていないものもあります。大きさも小さなものから巨大なものまで多種多様。日本で言う「妖怪」が妖精に当たるかもしれません。

妖精を信じるなら手を叩いて

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演劇の『ピーターパン』で、ピーターはこう言います。

ネバーランドでは人間の信じる心で妖精は生きている。一人の人間が妖精を信じなくなると一人の妖精が死ぬ。妖精を信じるなら手を叩いて

『ピーターパン』

彼は瀕死のティンカーベルを助けるために観客に呼びかけます。子どもは一生懸命手を叩きますが、大人になるとだんだん拍手をする人がいなくなっていきます。あなたは今も周りの目を気にせずに手を叩けますか?

本物であると主張

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ドイルは迷うことなく拍手した人でした。晩年になって心霊学にのめりんだドイルは、妖精写真は本物であると主張しつづけました。彼はオカルティズムに傾倒するあまりに友人であったハリー・フーディーニとも決別してしまいました。

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結局妖精事件はドイルの科学的検証能力の低さの証明となってしまったのですが、彼ばかりを責めることはできません。ヴィクトリア時代、無学な労働者から中流階級の人々、学者や貴族まで巻き込んだ心霊主義が大ブームになっていたからです。

ヴィクトリア時代の心霊主義ブーム

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ではなぜ、そのような心霊主義がヴィクトリア朝の人々の心に深く根ざしたのでしょうか。それは心霊主義が「魂の不死性」をうたっていたからでしょう。

近代科学が勃興し、経済の恐慌、世界大戦への不安に人々が恐れおののいていた時代でした。もし目に見えるものだけが現実で、人の死後に何も残らないとしたら、人間は無意味に生き無駄死にしているだけだと言えます。精神世界、心霊学の研究はさまよい悩める人々の希望でした。

不思議な存在を否定できない気持ち

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私は1966年のエルシーの告白後に生まれましたので、もちろんコティングリーの妖精が偽物であることも含めてこの事件を知ったのですが、それでも子どもの頃からずっと妖精はいるのだと信じていました──と書くと頭の中がお花畑なイタい人でしょうか。でも私はそんな不可思議な存在がいることをどうしても否定できません。

「ドイルの魂は次の世界へ旅立った」

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ドイルは彼の主張についていけない人々から批判を受け信用はがた落ちしました。しかし人気小説家としての収入も健康も顧みずに、世界中を旅して心霊学の講演を行いました。1930年07月に他界した時、妻のジーンは「ドイルの魂は次の世界へ旅立った」と言い、喪服を着なかったと言われています。ドイルは死ぬまで、いえ死後も見えない世界に浸りきった人でした。

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