『R.O.D-READ OR DIE-』。小説、アニメ、マンガなどメディアミックスで発表されていますが、スチームパンクとして見て頂きたいのがOVA版の『R.O.D』です。
スチームパンク的小道具いっぱい
大英帝国図書館の特殊工作員という設定なので、秘密基地のいくつかの部屋は伝統的なブリティッシュスタイルになっています。マホガニーのアンティーク家具に真鍮のメカ。対する偉人軍団の特殊武器もレトロテイスト。なにしろ偉人伝でおなじみの、平賀源内、ファーブル、リリエンタール、三蔵法師に一休宗純という面々なんですから。
オットー・リリエンタール登場
特に第一巻に出てくるリリエンタールのグライダーは必見です。オットー・リリエンタール(1848-1896)はドイツの機械制作者。ハングライダーを開発して自ら飛んだ飛行の先駆者です。「ドイツの滑空王」と呼ばれたリリエンタールは、自作のハングライダーで2000回以上も飛行実験をくり返しました。
グライダー飛行の滑空王
動力を使った飛行でなく、鳥が滑空するような揚力のグライダー飛行にこだわった人でした。しかし1896年の飛行実験中に失速し、地面に叩きつけられて48歳で亡くなりました。そのマッドサイエンティスト的変人ぶり、劇的な最期からスチームパンカーにファンが多いのではないかと思います。もちろん私もその1人です。
ニューヨークの空中戦
そのリリエンタールが『R.O.D』で自由自在に空を飛ぶシーンは敵ながら喝采せずにおれません。鳥を模したスチームパンクグライダーは、真鍮の蒸気ゲージにジェットエンジン付き。貿易センタービル健在のニューヨーク上空で、読子の乗った紙飛行機との激しい空中戦を行います。
リリエンタールはビルとビルの間を縫って飛び、レトロな棒つき手榴弾(イギリス風に言えばポテトマッシャー)を投げつけ、ルガーを撃ちまくります。
理想のビブリオマニア
随所に見られるレトロ&ハイテクメカ、アンティークな小道具、壮快なアクションやカメラワークも見どころですが、また別の理由でもこの作品を推したいのです。それは主人公の読子・リードマンが私の考える理想のビブリオマニアだからです。
本のコレクターはビブリオマニア?
ビブリオマニアとは「本」を意味する「ビブロス」と「マニア」の造語。一般には、珍しい本や高価で貴重な本を集める収集家を差すことが多いと思います。
でも「本そのものにフェティッシュな愛着を持ち、損傷を恐れてページを繰ることさえしない」のは、はたして本当の本好きなのかと疑問です。なぜなら買っただけで満足、手元にあればそれでいいという人は単に本の「コレクター」であって読書を愛する人ではないからです。
読書を愛するビブリオマニア
読子・リードマンは古書店の100円均一棚の本も、世界的な稀覯本でも全て平等に愛しているし、珍しい本だから、誰も持っていない本だからと大枚をはたくわけではありません。どんなに高価な本でも必ず手にとって目を通す、読まずにはいられない人……。
読子は素敵なビブリオマニアとして描かれています。ビブリオマニアが『R.O.D』において本の蒐集家でなく、読書を愛する人として登場した意味は大きいのではないでしょうか。
主題歌も素敵
キャラクタ、小道具、メカだけでなく、BGMも素晴らしいですよ。特にオープニング。007シリーズの主題歌っぽいというか、ルパン三世のテーマ曲のような大人テイストです。ぜひご覧あれ!【蒸気夫人(マダムスチーム)】