古今東西たくさんの俳優がホームズを演じてきました。中でも最も原作に近いと言われているのが、ジェレミー・ブレットの『シャーロック・ホームズの冒険』。動画とともにご紹介します。
『シャーロック・ホームズの冒険』とは?
『シャーロック・ホームズの冒険』は、1984年、英国グラナダテレビによって制作されたドラマシリーズ(通称:グラナダ版)です。日本ではNHKで1985年〜1995年に放映されました。
ホームズ役として主演したのは、英国俳優ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett 1933年〜1995)。映画『マイ・フェア・レディ』、『戦争と平和』、『超人ハルク』などに出演していますが、最もホームズらしいホームズ役としてシャーロキアンの間で人気を集めています。
完璧なシャーロック・ホームズの世界
まるでシドニー・パジェットの挿絵から抜け出てきたような完璧なジェレミーのホームズ。グラナダ版は、コナン・ドイルの原作に忠実であるだけでなく、ヴィクトリア時代のイギリスの風景を正確に再現しています。オープニングのベイカー街の映像と美しいヴァイオリンの音色だけで、気分は130年前の英国へタイムスリップ!
二人のワトソン
グラナダ版には、二人のワトソンがいます。第一のワトソンはデヴィット・バーク(David Burke、1934〜)。若々しく活動的なワトソンを13エピソード分演じましたが、「最後の事件」で降板しました。
第二のワトソンはエドワード・ハードウィック(Edward Hardwicke 1932〜2011年)。冷静沈着な落ち着きのあるワトソンを28エピソード演じました。
60編のうち映像かされた41エピソード
アーサー・コナン・ドイルは、1887年発表の『緋色の研究』から1927年の『ショスコム荘』までの40年に、56本の短編と4本の長編、合計60本のシャーロック・ホームズ物語を書きました。


グラナダ版は途中で予算のカットや、ジェレミー・ブレットの体調不良(薬の副作用で体重が増加したり、躁うつ病に苦しんだ)、エドワード・ハードウィックのスケジュール調整などの困難に直面しましたが、10年間にわたって41本のエピソードが撮影されました。
死後もなお人気のグラナダ版ホームズ
残念ながら1995年にジェレミー・ブレットは心不全のために亡くなりました。まだ61歳でした。グラナダ版で映像化されなかった作品は19作品。ジェレミーの早すぎるの死が非常に惜しまれます。
しかし今から30年近く前のドラマシリーズにもかかわらず、現在でもグラナダ版ホームズの人気は衰えていません。現在のBBCドラマ『Sherlock』の人気も、やはりグラナダ版という輝かしいドラマシリーズがあったからこそでしょう。
ドラマの映像のおかげで想像できた
私がこのグラナダ版ドラマを中学生の頃に見てからずっと、シャーロック・ホームズに魅了されてきました。小説で読んではいたけれど、遠い異国の英国・ロンドン、しかも100年以上も前の想像もつかなかった世界が、グラナダ版で一気に私の頭の中に構築されました。
19世紀末のヴィクトリア朝ベイカー街は、歴史考証の専門家を監修に招き、実物があるものは出来る限り当時のものを使用し、ないもの(モラン大佐の銃など)は考証に考証を重ねてスタッフが作り上げたそうです。シドニー・パジェットの挿絵と同じ構図で撮影するという念の入ったエピソードもありました。
私がはっきりと「大人になったらホームズの家に住むんだ!」という夢を描けたのも、すべてこのグラナダ版のおかげです。
『海軍条約文書事件』バラのスピーチ
シャーロック・ホームズは私の永遠のヒーロー。生きる手本であり、難しいことが起こった時にはいつも「ホームズならどうするだろうか?」と考えます。そんな時私の想像のホームズはジェレミー・ブレットのイメージと渾然一体となっているのです。
『海軍条約文書事件』のバラのスピーチのシーンなどを思い出して、「そうだな、こういう余計な出来事こそが人生の面白さだな」と心が落ち着いたりするのです。
レディ・ホームズのコスプレで参加します
私が現在ホームズの部屋を再現した家に住んでいるのも、『ネオヴィクトリアンDIYブック』という本が書けたのも、みんなグラナダ版『シャーロック・ホームズの冒険』があったからこそ。
というわけでサンジェルマン伯爵の時計塔では、偉大なるジェレミー・ブレットに敬意を表して、ジェレミー版シャーロック・ホームズ(レディ・ホームズ)の扮装ででかけようと思ったわけです。【蒸気夫人(マダムスチーム)】
