正礼装用のパンツ(トラウザーズ)には様々な決まり事があります。冠婚葬祭向けの黒い女性用パンツを燕尾服用パンツにカスタマイズしました。紳士服の豆知識も合わせてお読みください。
街を歩いていて人からじろじろと見られたら、君の服装は凝りすぎているのだ。
土台となる冠婚葬祭用レディースパンツ
冠婚葬祭用のレディースパンツを購入しました。葬儀にも使える真っ黒な色で、ストレッチも効いているからダンス衣装としてもぴったりです。理想のパンツに近いのですが、女性物なので正礼装のイブニングコート(燕尾服)用にいくつか改造する部分があります。
正礼装用パンツと一般のパンツとの違い
正礼装のパンツと普通のパンツの違いとは? 最初に正礼装パンツは股上がかなり長いです。ウエストコート(ベスト)やカマーバンドの下からシャツが見えるとかっこ悪いからですね。
そしてベルトはカジュアルでふさわしくないためベルトループもありません。よってベルトの代わりにブレーシズ(サスペンダー)を使います。ブレーシズの色は白のみです。
フロントのプリーツはどうすべきか?
仕立て屋さんによって意見が分かれますが、フロントのプリーツ(タック)は昔の文献やイラストによると入っていないことが多いため、正礼装の場合はプリーツなしの方が良いと個人的に思います。 動きやすいとか、ゆとりがあって楽──といったことはダンディズムから離れますものね。
裾上げのシングル&ダブルとは?
裾上げはモーニングコート、イブニングコートなどの燕尾服、タキシードなどの正礼装、準礼装は、絶対にシングルカットでなければなりません。 裾をまくるようなスポーツやアウトドアを連想させるダブルはカジュアルなので、フォーマル用には使えないからです。
改造点1:裾上げ
さあカスタマイズに移りましょう。改造点その1は裾上げです。購入したお店やリフォームのお店で裾直しをやってくれますが、私はハイヒールの高さに合わせて自分で裾直しをすることにしました。

ミシン縫いではなく手縫いで
表から見えないように、丁寧に手でまつり縫いします。 手間がかかりますが、フォーマルパンツにミシン縫いの裾上げはちょっと野暮ですものね。
表からほとんど見えない縫い目
あっという間に裾上げ完了。光を当てると、ちょんちょんと縫い目が見えますがほとんど目立つことはありません。
改造点2:ポケットをつける
私のパンツの改造点その2は、ポケット。女性物のパンツはポケットがないものが多いのです。シルエットが崩れる、制作費を削るためなどの理由がありますが、見た目だけのニセポケットになっていたりするので要注意です。でも男性が燕尾服やタキシードでポケットに手を入れているポーズはすごく素敵なんですよね。
縫い目利用ポケットをつける
というわけでパンツをポケット付きに改造することにしました。ポケットの型紙もたくさんの種類が『誌上・パターン塾Vol.1』に載っています。今回は縫い目利用のポケットを、表に響かないように裏地用の布で作ります。
ポケットに手を入れられるようになりました
パンツの両脇に、縫い目利用のポケットができました。これでポケットに両手を入れることができるようになりましたね。
側章(そくしょう)とは何か?
これは私の旦那様のタキシードのパンツです。フォーマルなパンツの両脇にはこんな風にラインが入ってますよね。これは側章(そくしょう)といいます。私のパンツには側章が入っていないので、改造点その3は側章です。
2種類の側章の仕立て方
側章の仕立て方は
(1)側章テープを仕立てた後から縫い付ける
(2)パンツの脇に側章用の布を挟み込んで縫う
の二種類があります。最初は光沢のあるサテンリボンを縫う(1)のやり方で縫ったのですが、後日イブニングコートのラペル(衿)と同じ桜柄のちりめんを使いたくなり(2)の方法に変更しました。出来上がったパンツをバラバラに分解し、共布の桜のちりめんを挟んで一から縫い直すことに。大変だった!
いったい何本? 側章の本数問題
さて。それは側章の本数について。
1.燕尾服は2本
2.燕尾服は1本
3.どちらでもよい
とテーラーさんによって意見が一致していないのです。かなり文献を読み込みましたが著者によって言っていることがバラバラ。海外のサイトを調べてみても同じく意見が分かれています。
世界大戦前の側章は1本!
側章の本数問題はずっと悩みのタネでしたが『紳士服を嗜む』という本に決定的な一文を発見しました。世界大戦前は側章は1本だったと書かれていたんです。 なるほど、それならスチームパンカーがが身につけるべき礼装パンツの側章は1本ですね!【蒸気夫人(マダムスチーム)】